取材:2026年9月8日
介護の仕事を始めたのは、今から25、6年前。きっかけは、三重県に住む主人の両親と金沢にいる私の両親が、同じような時期に病気や事故に見舞われたことです。私もできることなら駆けつけたかったのですが、当時は子どもたちが小学生や中学生。すぐに実家へ行くことができませんでした。「何もしてあげられなかった」という思いが心に残っていて、「せめて近くにいるお年寄りのお世話をしたい」と思ったんです。福祉の仕事をしている友人に相談し、紹介してもらったのが最初でした。資格もなく、本当に素人からのスタート。でも、当時は何も知らない不安よりも「早くやってみたい」という気持ちのほうが強かったことを覚えています。
最初は従来型の特別養護老人ホームでパートとして働きました。短時間勤務で必ず誰かと一緒に仕事をしていたので、最初から一人で対応するようなこともありません。働きながら少しずつ仕事を覚えていきました。
介護福祉士の国家試験を受けられる時期になり、挑戦したところ合格。それを機に正規職員になりました。実は試験日に忘れられない思い出があります。当日の朝、子どもたちが早起きしてお弁当を作ってくれたんです。お昼にお弁当を広げたら応援の手紙が添えられていました。今でも思い出すたびに涙が出て、「頑張らないかんなー」という気持ちにさせてくれます。
この仕事の魅力は、何といっても「ありがとう」という言葉が返ってくることだと思います。自分がしたことに対して、利用者さんから素直に「ありがとう」と言ってもらえる。それが本当にうれしいんです。
私は「利用者さんを楽しませるには、まず自分が楽しむこと」が大切だと思っています。同じ仕事をするなら、不満を抱えながらやるよりも楽しい気持ちで取り組んだほうがいい。気持ちの切り替えひとつで、仕事への向き合い方も変わると思います。
仕事の中で難しいと感じるのは、認知症の方への対応です。大切なのは、まず信頼関係をつくること。最初に「この職員さんは怖い人だ」と思われてしまうと、その印象はなかなか変わりません。介護の仕事はまた、マニュアル通りに進めればいいというものではありません。「今はトイレの時間だから行きましょう」とこちらの都合だけで進めるのではなく、「今、この人は行きたくないんだな」と、おおらかな気持ちで受け止めることも必要です。ほったらかしにするのではなく、利用者さんの様子を見ながら臨機応変に対応する。そこが大事だと思います。
利用者さんは、私たち職員のことを本当によく見ています。職員が忙しそうにせかせか動いていると「これを頼みたいけど、言いづらいな」と感じさせてしまうこともあるでしょう。だから私は、通りすがりでも「何してる?」「大丈夫?」と声をかけるようにしています。「心配しなくていいから、何でも話してね」という気持ちを伝えたいんです。
今後は、新しく入った職員の育成にも力を入れていきたいと思っています。まずは自分が実践して、それを見てもらう。「あれをやって、これをやって」と言葉だけで伝えるのではなく、一緒に動きながら学んでもらえたらと思っています。
利用者さんには、安心して生活できる場所をつくってあげたい。今までできていたことが、できなくなっていくことはご本人にとって、情けなく感じることもあると思います。でも、「それはみんな一緒。だから安心して暮らしてね」という気持ちで接しています。
介護職というと、「大変そう」「きつい仕事」というイメージを持っている方も多いかもしれません。でも、介護の仕事は決して特別なことばかりをしているわけではありません。食べる、トイレに行く、寝る、お風呂に入る。私たちが毎日当たり前にしている暮らしを、その方に合わせて少しお手伝いする仕事です。
もちろん、体力が必要なこともありますし、一人ひとりに合わせた対応には経験や工夫も必要です。それでも、大変なことばかりに目を向けるのではなく、自分自身が楽しむことも大切だと思っています。こちらが笑顔でいれば、利用者さんも笑顔になってくれる。そんな瞬間が、この仕事の楽しさであり、やりがいでもあります。
これからも利用者さん一人ひとりに寄り添いながら、一緒に笑って、一緒に楽しんで、私自身もこの仕事を楽しみながら続けていきたいと思っています。





