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第2章 愛知県地場産業等異業種展開事例

ページID:0053649 掲載日:2012年9月24日更新 印刷ページ表示

1.事例調査結果の傾向・分析

(1)調査の概要

 愛知県の地場産業である繊維工業、窯業・土石製品製造業、家具・装備品製造業、一部の食料品製造業について、全国の企業の異業種展開事例のヒアリング調査を行ったもの。

(2)参入事業の動向

 回答があった94社のうち、「好調」または「やや好調」と回答した企業が51社(54.3%)、一方で「不調」または「やや不調」と回答した企業は18社(19.1%)、残りの「普通」は25社(26.6%)となっている。傾向としては、一般消費者向けに丁寧な細工や加工を施した趣味性の高い商品や、環境、福祉関連分野は比較的好調、建築関係など景気の影響を受けやすい分野では不調と回答する企業が目立っている。

(3)参入した動機や経緯、きっかけ

 異業種に参入したきっかけは、「業績の悪化からの脱却を図る能動的進出」と「他者(取引先、顧客、公的機関など)からの依頼による受動的進出」に大別できる。
 能動的進出を動機とした企業では、特に自社の従来の事業分野からいかに成長性の高い新分野に展開できるかを真剣に調査、検討した様子が伺える回答が多くみられる。また、M&Aがきっかけで他社から事業や設備を引き継いだ事例もいくつかみられる。

(4)マーケティングについて

 回答があった103社のうち、マーケティングを「実施した」企業は33社(32.0%)、「実施しなかった」企業は70社(68.0%)となっている。簡単なものでは同業他社へのヒアリング調査から、公的機関の支援事業に採択された事例では、販路開拓や販売のための仕掛け作りの援助を受けられた例もある。
 一方、マーケティングを実施しなかった企業は7割近くを占めるが、それでも展示会や見本市の出品は最低限行っている企業が多い。しかし、「全く新しい製品なので調査などは敢えて行っていない」「ニーズがあることはわかっていたためそのまま製品化した」といった意見も散見される。

(5)参入にさいしての投資について

 回答があった78社のうち、既存の自社設備などで賄ったため0円と回答した企業が9社(11.5%)となっている。投資金額は、最も大きかった企業では70億円に上る。投資金額が大きい場合は、工場の新設、製造機械の購入などに充てられていることが多いが、投資の対象はこれらに限られるものでなく、宣伝広告費、社員教育費用、特許や商標など知的財産権の申請費用、デザイン費用、試作品の材料費や金型代など多岐に亘る。他社と合弁企業を設立した例もみられる。

(6)参入して最も効果のあったこと

 “売上が上がった”ことを具体的な事業成果として挙げた企業が目立っている。中には世界シェア第2位や国内シェア70%を獲得するような大事業に発展した例もある。
 別の効果としては、新規顧客開拓に対する効果や、今までは縁が無かった他業種の企業とつながりができて新たな人脈を築けたことを挙げた企業が多い。一般消費者向けの市場に進出した企業では、一般的な知名度の向上やマーケットの拡大などの効果がある。加えて、従業員が日常生活の中で自社製品に接する機会も生まれるため、従業員の意識改革につながったという効果もみられる。
 また、従来は下請製造を行うのみであった企業が、「自社ブランドを構築することで価格決定権を持つことができるようになった」「業界内での位置づけが変わって取引先が大手企業にシフトした」という例もみられる。

(7)参入の際に、最も困難だったこと

 多岐に亘る意見が出ているが、参入業種に関する業界知識が無いことに伴う問題が多くみられる。法制度や業界の体質、購入時期・頻度、販路開拓や営業など、業界知識の範囲だけでも広範に及ぶ問題が発生する。
 更には、社内における合意形成、資金調達から実際の開発技術の困難性、新規事業に係る人員配置・教育、一般消費者へのクレーム対応など、モノの製造から販売に至るまで様々な側面において困難が潜んでいると言える。成長分野の産業のスピードの早さや技術の変化への対応に加え、海外マーケットを対象にした場合は円高リスクも加わり、従来と違う新たな困難の克服を迫られるケースもみられる。

(8)今後の展望・見通し

 回答があった103社のうち77社(74.8%)が、事業規模は異なるものの今後「拡大」を見込んでおり、意欲の強さが伺える。これから拡大していきたいという願望的な意見も多いが、海外展開や商品の種類の増加、具体的な目標数値を掲げて売上拡大を視野に入れている企業も多くみられる。
 「現状維持で継続」とする22社(21.4%)の企業については、「社会環境の悪化により厳しい見方にならざるを得ないような場合」や「自社の生産体制の限界から現状が上限であるような場合」が多く、必ずしも意欲が低いというわけではない。

(9)参入のメリット・デメリット

 異業種参入によるメリットとしては、「売上増による増収増益」「販路拡大」「取引先の増加」「事業拡大」「新たな収益源の確保」などを挙げる企業が目立っている。そのほか、「異業種との交流や連携の機会が増える」「新しい情報が収集できる」との意見が多くみられ、その結果「新しい技術・知識の会得」「新製品開発」「新規事業参入」につながると答えた企業も多い。また、「会社の知名度・イメージアップ」や「社内活性化、従業員の士気向上につながる」との意見も多くみられる。
 デメリットとしては、「開発費がかかる」「開発に要した費用を回収できるかわからない」など、開発に伴うリスクに関する意見が目立っている。そのほか「本業への影響」を懸念する意見も複数みられた。また、「新しい分野でわからないことが多い」「大手企業には勝てない」といった意見も散見される。

(10)参入時のアドバイス

 最も多くみられたのが「本業」に関する意見で、「本業の売上を確保する」「今まで本業で培ってきた技術を生かす」「本業との関連性や相乗効果のある分野へ参入する」などの意見が目立っている。また、「自社ができる範囲で行う」「無理をしない」との意見もみられた。そのほか、「常に情報収集に努める」「市場のニーズ、動向をよく調査する」といった意見も複数みられる。

(11)参入に際し、役に立った行政、支援機関の制度

 国や地方公共団体の助成・補助制度を利用している企業は60社(58.8%)あった。また、公設試験研究機関や産業支援センター等の技術相談・アドバイスを受けた企業は12社(11.8%)あった。

(12)参入に際し、行政に対して望む支援

 最も要望が多い内容は補助金制度改善に関するもので、なかでも「手続きの簡素化」を求める意見が目立つ。また、「条件の緩和や使い道の拡大」「研究機関での検査費用の助成・補助」「継続的な支援・アドバイス」などを要望する企業が多くみられる。
 そのほかでは、「販路開拓のためのサポート」「製品の展示会開催などPR活動」「異業種企業、専門家、研究機関とのコーディネイト」「新規事業に対する規制緩和」を求める意見が比較的多くみられる。

(13)業種別の展開先

業種別の展開先

主業種名

展開先の業種名

件数

味そ製造業 1件

卸売業

1件

しょう油・食用アミノ酸製造業 3件

食料品製造業

1件

飲料・たばこ・飼料製造業

1件

卸売業

1件

清酒製造業 4件

食料品製造業

2件

飲料・たばこ・飼料製造業

1件

化学工業

1件

繊維工業 51件

繊維工業

26件

家具・装備品製造業

3件

印刷・同関連業

1件

化学工業

4件

ゴム製品製造業

2件

鉄鋼業

1件

生産用機械器具製造業

1件

電子部品・デバイス・電子回路製造

1件

輸送用機械器具製造業

2件

その他の製造業

5件

建設業

1件

情報通信業

1件

卸売業

2件

サービス業

1件

家具・装備品製造業 10件

木材・木製品製造業

1件

家具・装備品製造業

8件

業務用機械器具製造業

1件

化学工業 1件

化学工業

1件

プラスチック製品製造業 1件

プラスチック製品製造業

1件

窯業・土石製品製造業 24件

家具・装備品製造業

1件

窯業・土石製品製造業

12件

鉄鋼業

1件

金属製品製造業

1件

生産用機械器具製造業

1件

業務用機械器具製造業

1件

電子部品・デバイス・電子回路製造

1件

その他の製造業

6件

その他の製造業 2件

化学工業

1件

窯業・土石製品製造業

1件

卸売業 5件

繊維工業

2件

輸送用機械器具製造業

1件

その他の製造業

1件

卸売業

1件

2.事例掲載企業一覧 及び 3.事例の紹介