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“混ぜるだけ”で防炎処理!パルプモールドの簡易で環境にやさしい防炎処理技術を開発しました

ページID:20231023 掲載日:2023年10月23日更新 印刷ページ表示
9 産業と技術革新の基盤をつくろう12 つくる責任 つかう責任14 海の豊かさを守ろう15 陸の豊かさも守ろう

   あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市。以下「センター」という。)は、株式会社名古屋モウルド(丹羽郡扶桑町。以下「名古屋モウルド」という。)と共同で、パルプモールド※1の新しい防炎処理※2技術を開発しました。
     従来の防炎処理は成形工程の後に処理専用の工程が必要で、コスト増加の要因となっていました。一方、本開発技術では、難燃剤※3を原料に混合するだけで、成形工程中に防炎処理が可能です。この難燃剤の混合だけによる防炎処理技術開発は、全国初です。
   本開発技術を用いた壁紙などの試作品は、2023年11月8日(水曜日)から11月10日(金曜日)までの3日間、ポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催される「メッセナゴヤ2023」で展示する予定です。

1 開発の背景・概要

   パルプモールドは古紙などの紙を原料とした成形品で、卵パックや果物用トレイ、工業製品の緩衝材などに使用されています。軽量でリサイクルも容易なため、SDGsや低炭素社会に寄与する材料として、様々な場面で利用が拡大しています。
​   凹凸による意匠性、防音性を活かした壁紙及び自動車用内装材といった用途がその一例です。これらの用途では、安全性を考慮して防炎性を付与することが求められています。
​   現在、パルプモールドの防炎処理は、成形工程後に難燃剤溶液を塗布する、又は含浸(がんしん)させる方法で行われています。これらの方法は、専用の装置、乾燥時のエネルギーコストや作業時間が必要です。そのため、より簡易な防炎処理技術が求められていました。

2 開発の詳細

(1)研究開発の概要
   パルプモールドの成形は、原料のパルプスラリー※4を金型で吸引・脱水して行います。より簡易な防炎処理技術として、原料スラリーに難燃剤を添加することを検討しました。しかし、単に難燃剤をパルプスラリーに添加しただけでは、吸引・脱水成形時に難燃剤が水と共に流出してしまいます。その結果、製品中に留まる難燃剤が少なく、防炎性が十分ではないという課題がありました。
   そこでセンターは、2020年より名古屋モウルドへ技術支援を行い、共同で上記課題の解決に取り組みました。流出しにくい難燃剤の種類と成形方法を検討することで、成形工程中に防炎処理が可能となりました。難燃剤が排水に流出しにくいので排水処理への負担が小さく、環境に優しい防炎処理です。この難燃剤の混合だけによる防炎処理技術開発は、全国初です。
​   この技術で作製した防炎パルプモールドは、公益財団法人日本防炎協会が指定する「ローパーティションパネル、展示用パネル」に関する防炎製品性能試験基準※5を満たす性能を有しています。

fig1
​図1 パルプモールド生産工程(脱水成形工程)

fig2
​図2 開発した防炎パルプモールド壁紙

fig3
​図3 燃焼試験の様子(左:従来品  右:開発品)
​(従来品は燃え広がるが、開発品は難燃剤で炭化が早まり燃え広がらない。)

(2)研究開発体制
   本開発は、公益財団法人内藤科学技術振興財団の助成「2022(令和4)年度(第34回)助成研究」を受けて実施しました。

3 技術移転を目指した今後の予定

   センターでは、今回の防炎パルプモールドに関心のある企業の方々からの相談や問合せに随時対応します。また、上記試作品を展示会「メッセナゴヤ2023」内の「知の拠点あいちブース」及び「扶桑町商工会ブース」に出展し、開発技術を紹介します。​

4 問合せ先

(開発、試作品に関すること)
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター環境材料室
   担当:村松、林
刈谷市恩田町一丁目157番地1   ダイヤルイン:0566-45-6902
​https://www.aichi-inst.jp/sangyou/
(製造、販売に関すること)
株式会社名古屋モウルド
   専務取締役  野倉 博(のくら ひろし)
丹羽郡扶桑町大字高雄字宮前161  電話:0587-93-2771
https://www.mould.co.jp/

 

<参考>メッセナゴヤ2023の概要

(1)日時
   会場開催 2023年11月8日(水曜日)から11月10日(金曜日)まで
                     (開催時間)午前10時から午後5時まで
   オンライン開催 2023年11月1日(水曜日)午前10時から11月30日(木曜日)午後5時まで
(2)場所
   会場開催 ポートメッセなごや第1展示館
                     (名古屋市港区金城ふ頭二丁目2番地  電話 052-398-1771)
   オンライン開催 メッセナゴヤ公式WEBサイト
                     (https://www.messenagoya.jp/)
(3)概要
   業種や業態の枠を超え、幅広い分野・地域からの出展を募り、出展者と来場者相互の取引拡大、情報発信、異業種交流を図る日本最大級のビジネス展示会。
(4)入場料
   無料
(5)ブース名
   知の拠点あいち、扶桑町商工会
(6)主催
   メッセナゴヤ実行委員会(愛知県、名古屋市、名古屋商工会議所)

【用語説明】
※1  パルプモールド
   古紙等のパルプ原料を水に入れて撹拌し、金型で吸引・脱水して抄(す)き上げた成形品。卵パック、果物トレイや工業製品の梱包材などで使用されている。
   原料の大部分が紙であるため、軽量でリサイクルが可能。また、意図せず環境中に排出された場合も、土中や海中で分解されるため、環境負荷が低い。近年、発泡スチロールなどのプラスチック製品から置き換えが進んでいる。


※2 防炎処理
   本来燃えやすい材料を加工して、燃えにくい性質を持たせること。防炎性は火災の拡大を防ぐために必要な性質であり、カーテンやブラインド、カーペットなどには防炎物品を使用することが消防法で定められている。


※3  難燃剤
  燃えやすい材料を燃えにくくする機能を持った物質のこと。燃焼反応を抑えるもの、材料の炭化を早めて燃焼を止めるもの、材料から熱を奪うものなどがある。今回使用したリン酸系の難燃剤は材料の炭化を早める性質を持っている。人体への有害性が低いことから、紙製品や繊維製品への適性が高い。


※4  パルプスラリー
   紙の原料であるパルプを水に分散させた液のこと。パルプスラリーを作るには、パルプを水に入れてよく混ぜる必要がある。そのため、難燃剤などの添加剤をこの段階で入れると、パルプとの混ざりが良くなる。


​※5  防炎製品性能試験基準
   公益財団法人日本防炎協会による、防炎製品の認定に用いられる基準。消防法に基づく防炎規制以外のもので、学識経験者・消防機関・使用者団体から成る「防炎製品認定委員会」によって定められた基準。
   斜め45度に傾けて固定した製品に、バーナーの炎を一定時間当て、製品の燃焼の状況を確認する試験が主に行われる。

このページに関する問合せ先

​あいち産業科学技術総合センター産業技術センター環境材料室
   担当:村松、林、森川
刈谷市恩田町一丁目157番地1   ダイヤルイン:0566-45-6902