ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 組織からさがす > あいち産業科学技術総合センター > 特許技術で抗菌加工した尾州毛織物と三河木綿が愛知県手帳限定版の表紙になりました

本文

特許技術で抗菌加工した尾州毛織物と三河木綿が愛知県手帳限定版の表紙になりました

ページID:20231018 掲載日:2023年10月18日更新 印刷ページ表示
9 産業と技術革新の基盤をつくろう13 気候変動に具体的な対策を14 海の豊かさを守ろう15 陸の豊かさも守ろう

   あいち産業科学技術総合センターは、連携企業と共同出願している特許技術※1を応用して、尾州(びしゅう)毛織物※2と三河木綿※3を抗菌加工する技術を開発しました。この抗菌加工には、生地本来の高級感ある風合い※4を損なわないという特徴があります。また、抗菌加工に使用する抗菌剤は、環境にやさしい植物素材の一つであるセルロースナノファイバー(CNF)※5を利用しています。
   この度、抗菌加工を施した尾州毛織物と三河木綿が、2024年(令和6年)版愛知県手帳(限定版)の表紙生地になりました(愛知県手帳の一般販売については、同日発表済み)。
   なお、手帳及び本開発技術を、2023年11月8日(水曜日)から11月10日(金曜日)までの3日間、ポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催される「メッセナゴヤ2023」及び、2023年11月17日(金曜日)・11月18日(土曜日)に、蒲郡商工会議所(蒲郡市)で開催される「テックスビジョン2023ミカワ」において展示します。

1 開発の背景

   あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市)では、環境に配慮した製品の開発が求められる企業に対して、植物素材の利用促進、分析などの技術支援を行っています。中でも、新素材として期待されるセルロースナノファイバー(CNF)については、自動車部品、繊維処理剤、金属研磨剤、フィルター、建材、塗料添加剤といった多くの産業部材の開発を行っています。
​   あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター(一宮市)とあいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター(蒲郡市)は、繊維の総合産地である尾張地域と三河地域において、生活関連素材や産業用素材の研究開発、製品評価を実施しています。また、産地の基盤を生かした、企業の新規分野への進出を支援しています。特に、愛知県特産品の尾州毛織物と三河木綿については、職人技術の継承、地場産業の振興を目的とした開発及び情報発信に取り組んでいます。
​   今回はこの3つのセンターが連携して、地域の企業連携による地場産業の活力向上を目的として、尾州毛織物と三河木綿の抗菌加工に取り組みました。

2 開発の詳細

(1)抗菌加工の特徴について
​   抗菌加工の主な特徴は、以下のとおりです。
      ・植物素材のCNFで、銅や銀などの抗菌性金属粒子を織物に定着させるため、石油系合成品の定着剤で織物に定着させるより環境にやさしく、天然繊維の風合いを損なわない。
      ・表面のスケール※6が撥水性である動物性繊維の羊毛(尾州毛織物)と、親水性の植物性繊維である綿(三河木綿)のいずれにも抗菌加工ができる。
      ・織物を抗菌剤に浸漬(しんせき)するだけで、容易に抗菌加工ができる。
      ・一般社団法人日本銅センターのCU STAR(シーユー スター)認証※7を受けた高い抗菌活性を有する。
(2)抗菌加工技術について 
   これまでに産業技術センターでは、CNFと抗菌性銅粒子を添加した抗菌剤を企業と連携して開発しています(特願2021-117558)。
   従来の抗菌剤は、親水性の植物性繊維である綿に吸収され易く、良好に抗菌加工ができました。一方、表面が撥水性の動物性繊維である羊毛には吸収されにくく、加工後の生地に白い斑点が発生するという問題がありました(図1)。
   そこで、羊毛に適した抗菌剤の配合を検討しました。その結果、改良した抗菌剤は、速やかに羊毛に吸収され、良好に抗菌加工ができるようになりました(図2)。
   改良した抗菌剤は、未加工時に0.4マイクロメートル程度しか開いていない羊毛表面の隙間を(図3)、5分程度(装置による連続加工時間以内)で1マイクロメートル程度にまで広げることが観察されました(図4)。図4の羊毛表面の隙間は、改良した抗菌剤が迅速に吸収される現象を捉えており、羊毛内部の親水部にまで、むら無く均一に吸収・加工された要因の一つであると考えられました。
   なお、これらの羊毛及び綿の抗菌剤は、手帳表紙用生地の加工に合わせ、2023年7月20日(木曜日)水野金属商事株式会社(豊田市)の商品として一般社団法人日本銅センターのCU STAR認証を受けました。

fig1
​図1 抗菌加工後の毛織物
(改良前)

fig2
​図2 抗菌加工後の毛織物
(改良後)

fig3
図3 未加工時の毛織物表面観察結果
(羊毛表面の隙間がほとんど開いていない)

fig4
図4 抗菌加工後の毛織物表面観察結果
(羊毛表面の隙間が大きく開いている)​

(3)愛知県手帳限定版用生地の製作について
   尾張・三河の両繊維技術センターにおいて抗菌加工後の生地について風合い試験を行い、天然繊維本来の高級感のある風合いを保持することを確認しました。
   また、手帳の表紙として使用するために、抗菌加工後の生地は、台紙への接着性及び箔押し性も良好であることを試験で確認しました(図5)。
   なお、愛知県手帳(限定版)用生地の試作開発から製作に当たっては、一般社団法人尾西繊維協会(一宮市)から「尾州毛織物」の生地を、蒲郡市から三河織物工業協同組合の組合員が製作した「三河木綿」の生地をそれぞれ提供していただくなど、一宮市、蒲郡市を始め地域関係者の皆様に御協力いただきました。

fig5
​図5 愛知県手帳2024年度限定版の表紙
​(左:尾州毛織、右:三河木綿)

3 技術移転を目指した今後の予定

   本技術を開発した3センターでは、尾州毛織物と三河木綿の開発、抗菌剤及びセルロース加工技術に関心のある企業からの相談や問合せに随時対応しています。また、上記、試作品を展示会「メッセナゴヤ2023」及び「テックスビジョン2023ミカワ」に出展し、愛知県特産品の尾州毛織物と三河木綿のPRと共に開発技術を紹介します。​

4 問合せ先

(繊維の抗菌加工、メッセナゴヤ2023に関すること)
   あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
   環境材料室(担当:伊藤(雅)、北尾、森川)
   刈谷市恩田町一丁目157番地1
   ダイヤルイン:0566-45-6901
(尾州毛織物、繊維の試験に関すること)
   あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター
   素材開発室(担当:浅野、加藤(一))
   一宮市大和町馬引字宮浦35
   電話: 0586-45-7871
(三河木綿、テックスビジョン2023ミカワに関すること)
   あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター
   製品開発室(担当:平石、安田)
   蒲郡市大塚町伊賀久保109
   電話:0533-59-7146
(抗菌剤に関すること)
   水野金属商事株式会社豊田支店
   営業部(担当:主任  佐藤 幸治(さとう こうじ))
   豊田市駒場町田戸51-1
   電話:0565-57-5311
   URL:https://www.mizunokinzoku.com/company/
(特許技術に関すること)
   日清紡(にっしんぼう)テキスタイル株式会社大阪支社
   事業戦略室 兼 商品開発部(担当:執行役員  蓮蔵 和彦(れんぞう かずひこ))
   大阪市中央区北久宝寺町2丁目4番2号
   電話:06-6267-5536
   URL:https://www.nisshinbo-textile.co.jp/index.html
(愛知県手帳に関すること)
   愛知県統計協会(担当:後藤、福永)
   愛知県県民文化局県民生活部統計課内
   名古屋市中区三の丸3-1-2
   電話:052-954-6101
   メール:toukei@pref.aichi.lg.jp
   URL:https://www.pref.aichi.jp/toukei/rink/kyoukai/kyokai.html

 

【参考】
​(1)メッセナゴヤ2023
   (ア)日時
      会場開催:2023年11月8日(水曜日)から11月10日(金曜日)まで
                    各日午前10時から午後5時まで
      オンライン開催:2023年11月1日(水曜日)午前10時から11月30日(木曜日)午後5時まで
   (イ)場所
      会場開催:ポートメッセなごや 第1展示館(名古屋港金城ふ頭)
                    名古屋市港区金城ふ頭二丁目2番地 電話:052-398-1771 (代表)
      オンライン開催:メッセナゴヤ公式WEBサイト
                              URL:https://www.messenagoya.jp/
   (ウ)概要
      業種や業態の枠を超え、幅広い分野・地域からの出展を募り、出展者と来場者相互の取引拡大、情報発信、異業種交流を図る日本最大級のビジネス展示会。
   (エ)入場料
      無料
   (オ)主催
      メッセナゴヤ実行委員会
      URL:https://www.messenagoya.jp/
   (カ)ブース名
      あいち産業科学技術総合センター


(2)テックスビジョン2023ミカワ
   (ア)日時
      2023年11月17日(金曜日)・11月18日(土曜日) 両日午前10時から午後4時まで
   (イ)場所
      蒲郡商工会議所 1階 コンベンションホール
      蒲郡市港町18番23号  電話:0533-68-7171
   (ウ)概要
      繊維総合展示会。開発製品の展示や三河産地の活性化を図るための講演会を実施。
   (エ)入場料
      無料
   (オ)主催
     テックスビジョンミカワ開催委員会
      URL:https://texvision-mikawa.jp/
   (カ)ブース名
      令和5年度 三河繊維技術センター研究試作展

(3)一般社団法人日本銅センター
所在地:東京都台東区上野1丁目10番10号  うさぎやビル5階
会長:野崎 明(のざき あきら)
事業内容:銅に関する正しい知識の普及による需要促進をめざした、広報活動、調査・研究、技術開発。
URL:http://www.jcda.or.jp/

(4)一般社団法人尾西繊維協会
所在地:一宮市栄四丁目6番8号 一宮商工会議所ビル5F
代表者:加納 一(かのう はじめ)
事業内容:繊維商工業に関する事業を行い、繊維商工業に寄与することを目的に、情報の紹介並びに資料の収集及び展示、施設の設置、維持及び運営、講演会、講習会、研究会等を開催。

(5)三河織物工業協同組合
所在地:蒲郡市神明町12-20
理事長:小林 智也(こばやし ともや)
事業内容:地域ブランド「三河木綿」の認知度アップと新商品の開発、産地の活性化を図るための諸施策の実施。

 

【用語説明】
※1 共同出願している特許技術
出願番号:特願2021-117558(提出日:2021年7月16日)
特許出願人:日清紡テキスタイル株式会社および愛知県(共同出願)
発明の名称:機能性担持体を含有する繊維処理剤の製造方法と該製造方法により製造された繊維処理剤および機能性繊維製品

※2 尾州毛織物
   愛知県一宮市を中心にした尾州地域産の毛織物(ウール)。奈良時代以降、織物産地として発展し、糸から織物に至る全工程が地域に結集し、分業体制を確立している。

※3 三河木綿
   愛知県三河地方産の綿織物。2007年2月に特許庁の地域団体商標に登録されている(商標登録番号:第5023103号、三河織物工業協同組合)。
   三河地方では、他の地域に先駆けて綿業が発展した。明治時代には、その綿製品の質の良さが「三河木綿」というブランド名で全国に知れ渡った。

※4 風合い
   “こし”、“ぬめり”、“ふくらみ”などの用語で表現される布の手触り感。風合い試験機で、「引張試験」、「せん断試験」、「曲げ試験」、「圧縮試験」、「表面試験」という五つの評価試験から得られる布の力学特性から、数値として換算することができる。

※5 セルロースナノファイバー(CNF)
   セルロースは植物の細胞壁の主成分で、地球上で最も多く存在する炭水化物。紙や綿の主成分であり、植物が光合成により太陽光と二酸化炭素を利用して合成し、大気中の二酸化炭素を増加させず(カーボンニュートラル)、微生物などにより分解されることから、環境に優しい材料として知られている。
   セルロースナノファイバーは、セルロースの太さが数十~数百nm(ナノメートル、1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)程度の繊維状に加工した素材。保水性、低熱膨張率、透明性等、優れた特性を持ち、自動車部品、食品、化粧品、電子機器及び再生医療など様々な分野での利用が期待されている。

※6 スケール
   羊毛は、一般にスケール(キューティクル)、皮質部(コルテックス)および毛髄部の3つの構造部分で成り立っている。スケールは、最も外側の表皮に相当する部分で、鱗状の細胞が数層重なって並んでいる。スケールの一番外側にはエピキューティクルという名称の非常に薄い撥水性の層があり、エピキューティクルより内側は、反対に親水性の素材で構成されている。そのため羊毛は、スケールの隙間が小さいと撥水性だが、隙間が大きくなると親水性の部分に水が入り込みやすくなり、吸水性が大きくなる。

※7 CU STAR認証
   銅の超抗菌性能を生かした材料、製品を世の中に広く普及させる目的で、日本銅センターが独自に行っている認定制度。日本国内のみ有効で、抗菌銅材料及び抗菌銅製品に対して認定を行う。
Cu
​CU STAR認証製品のロゴ

このページに関する問合せ先

あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
環境材料室(担当:伊藤(雅)、北尾、森川)
刈谷市恩田町一丁目157番地1
ダイヤルイン:0566-45-6901