院長あいさつ
愛知県医療療育総合センター中央病院
病院長 新美 教弘
唐突ですが、古くから近江商人は「三方よし」という言葉を商いの心得にしてきました。
その理念は、「売り手よし・買い手よし・世間よし」の三つを同時に満たすことです。自分たちの利益だけではなく、取引相手が満足し、そして社会への貢献を重視する考え方で、単なる商売の成功ではなく、持続的で信頼される経済活動を目指す姿勢を示しています。現代の企業倫理や社会的責任にも通じる普遍的な価値観として評価されています。さて、この言葉は会社だけでなく、あらゆる人の立場に言い換えることができるのではないでしょうか。
医療の現場における「三方よし」とは、医療者よし・患者よし・家族よしの三者がともに納得し、安心できる医療を目指す姿勢です。医療者は専門性を生かして最善の治療を提供し、患者は自らの意志と希望を尊重されながら安心して治療を受け、社会復帰への道筋を得られる。そして、家族は患者が支えられることで心の負担が軽くなる。三者が互いに信頼し合い、協力して治療に向き合うことで、より良い医療と持続的なケアが実現します。私は、医療療育総合センター中央病院の職員の皆さんに常日頃このフレーズを意識して職務についてもらいたい旨を伝えています。
中央病院の大切な機能として、障がいを持たれた方の短期入所・レスパイト入院があります。日頃、障がいを持たれた方が在宅医療を受けられている場合、この制度は大きな意味があります。例えば、患者さんのご両親が兄弟の学校行事に参加したいという時には、医療的なケアなどを理由にあきらめざるを得なかったということは過去には多々あったと思います。しかし、この制度を利用することによって、上記の「三方よし」が成立する良い事例ではないでしょうか。
ホームページにご案内されているように、私たちは小児や障がいを持たれた方に対し専門的な医療を提供する集団です。一方で、これらの患者さんが日常どのような様子なのかを理解されずに、標準化された一般的な医療を受けられないと言う側面もあります。特に高齢化によって頻度が高くなる循環器、がん、腎臓などの疾患に関して私たちの施設だけでは専門的な医療を提供出来ないジレンマを抱えています。障がいを持たれた方の一般状態が正しく理解されるように情報を提供し、私たちに足りない分野には地域の医療機関と連携して受け皿になっていただく様に積極的に努めて参ります。
最近は発達障害を抱えるお子さんは格段に増えている実感があります。子どものこころ科では、多職種のチーム医療によって学校に行きづらい子どもたちが少しでも自信を取り戻せるような支援を行っています。児童精神科医の不足は大きな社会問題です。限られた専門医のなか、受診の機会を公平にできるように腐心していますので、ご理解のほどよろしくお願いします。簡単ではございますが、ご挨拶に代えさせていただきます。
令和8年4月吉日

