ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 組織からさがす > 農政課 > 2023年度 食と緑の基本計画推進会議 結果概要

本文

2023年度 食と緑の基本計画推進会議 結果概要

ページID:0482815 掲載日:2023年9月29日更新 印刷ページ表示

 

日時

2023年8月25日(金曜日)午後1時30分から午後3時30分まで

場所

愛知県庁 本庁舎6階 正庁

出席者数

構成員12名

 

会議

会議の様子

徳田座長

座長 名古屋大学大学院生命農学研究科 徳田教授

 

協議事項

「食と緑の基本計画2025」の推進について

構成員からの主な発言

愛知県農村生活アドバイザー協会  加藤​​会長
  • 担い手確保対策について、食と緑のレポート2023では延べ372名の新規就農者があったと報告している。アドバイザーとして活動する中で、新規就農しても途中で離農する方もいると聞いたことがある。県が把握している新規就農者のうち、どのぐらいの割合の方が定着しているのか、また、離農された場合の原因を把握されているなら伺いたい。
  • もう1点、新規就農しても様々な事情で適切な営農が行われていない事案もあると伺っている。品目にもよるが、農業経営が安定するまでにはそれなりの年数を要すると思われることから、新規就農者が営農を継続するために、県としてどのような支援を行っているのか伺いたい。

愛知県農業協同組合中央会  加藤​代表理事理事長

  • ​​まずは県農業水産局の皆様方には、燃油、肥料、飼料等の生産資材価格の高騰対策、そして直近ではいろんな自然災害が頻発している中でタイムリーな支援をいただき感謝申し上げる。そういった中であるが、このような機会をいただいたので我々生産者側から気になっていることを申し上げたい。
  • 食と緑の基本計画2025ではもともと農業産出額は3,150億円を目指すということで書かれているが、食と緑のレポート2023の4、5ページでは各進捗指標が80%を達成して概ね順調だという説明があった。しかし、2022年のデータがまだ無いということではあるが、2021年には農業産出額2,922億円ということで、目標は大きく下回っている。コロナウイルスの関係があるというものの、一方で我々生産現場では、農地や担い手の方々、いわゆる生産基盤が随分弱ってきているのではないかということを心配している。我々も、生産基盤をいかに維持するか苦労している。例えば農地の面で申し上げると、せっかく農地を集積して農業を続けようという体制を作った途端に、例えば高速道路のインターの出口周辺では、優良農地の広大な面積が一度に転用されてしまうとういう実態がある。こういったことに対して、どのような筋道で3,150億円を維持していこうと考えているのか示していただきたい。また、何らかの対策が必要ではないかと考えている。
  • それから農業従事者は、基幹経営体数ということで指標がとられているが、800万円以上の認定農業者という中心的な方々の数値を取っているが、農業はもっと多くの方々で地域を守っている。その中でも基幹的農業従事者という数値があるが、これは現在60歳未満の方々が約4分の1、残りの4分の3が60才以上の方々という高齢になっているということで、20年先になるとデータ上は4分の1まで減ってしまうと言われる中で、いかに将来の農業従事者を作っていくのかが重要である。食と緑のレポート2023を見ると新規就農者数が372人と報告されているが、これは農業を経営する方に加えて、農作業に従事する雇われる方々も入っているのではないかととらえているが、いかに農業に従事する方々が増えていくかも一つの大きな課題であると思っている。そしてそういったことを考えたときに、若い人たち、また中堅の方々でも、農業に就きたいと思うような産業としての魅力をいかに作り上げていくか、これが我々生産者側も、また県行政も、一体となって作り上げていく必要があるのではないかと申し上げたい。
  • 食農教育というのも大切であり、取組も進めていただいているが、やはり農業そのものの魅力をどうやって高めていくか、ここに工夫が要るのではないかと考えるので、そのような面についてどのように具体的に検討されているのかお聞きしたい。
  • もう1点、需要の面では、先ほども生産資材が高騰し高止まりしているという発言もあったが、そういった中で、品物によっては不足しており、玉ねぎの値段が上がった等、値段が上がると報道される。卵の値段が上がったということはあるが、押しなべていくとほとんどの値段は上がっていない。こういった中で、生産コストは何十%で上がっており、農業者は所得がほとんどない、または赤字の状態になってきており、営農を続けられない農業者がたくさん出てきているのが現実であるため、食と緑の基本計画の指標は適切なのかどうかと考える。そういった中で適正な価格について、国でも議論がされ始めたが、本当に農産物の価格について、県民の方々にいかに理解していただくか、とりわけよく言われるのが、「目先の価格なのか、長期的な日本国民の命を守る食を守るのか」という観点であるが、県民の皆様方にいかに理解いただくか、その機会をどう作っていくのか考えがあれば教えていただきたい。

愛西市立永和中学校  櫛田校長

  • 教育現場を代表して、意見を述べさせていただく。小学校では、農業体験としてレンコン掘りなどを行ってきたが、コロナによって体験できなくなり、コロナが明けた現在においても、以前のように農業体験ができる場所がなくなってしまった。また中学校においても、職場体験学習等の機会を通して、農業の魅力が体験できるとよいアピールになると考えている。
  • そのため、体験を通じて、農業に興味を持ち、今後の担い手となる可能性のある小中学生に対して、農業の魅力をアピールするとともに、農業体験活動のできる機会を充実させていただきたい。​
  • また、専門の知識を持った農協の方などに指導に来ていただけると良い体験ができるため、体験の際に、来ていただけるととてもありがたい。​
  • もう1点、食育や地産地消については、愛知を食べようウィークなどで、学校給食の中でPRを行っている。学校給食では、栄養のバランスを考えて作っているが、家庭で子供に食べさせる親世代が食に対する知識が不足していたり、技能がなかったりという場合がある。栄養のバランスを考えて作ることなど、親世代への食育指導も推進していただきたい。​

​​愛知県土地改良事業団体連合会 佐藤​事務局長​

  • ​私の方からは、多面的機能に対する取組について伺いたい。農地は食料生産の場ではあるが、御存知のように多くの多面的機能を有する場所でもある。一方、農地、農業用用排水施設、農道などの日常管理は、農家の方及び農家の集まりである土地改良区が行っているのが現実である。担い手に集積が進む反面、農家の高齢化も伴い、農業離れが進行しており、将来の農地保全、農業施設の維持管理に対して心配されるところである。
  • こういった中の対策として農家、非農家一体となって、農地、農村環境を維持保全する取組である多面的機能支払制度について、現在県内で400余りの組織が活動を行っている。私ども愛知県土地改良事業団体連合会ではこの活動が、農村を取り巻く環境保全に重要な制度であるととらえ、愛知県、市町村とともに、活動の推進、活動組織への支援を行っており、本年度で17年目となる。そこで今後、この活動組織の縮小を防ぎ、より効果を発揮していくため、どのように取組を進めていかれるかという県の考え方をお聞かせいただきたい。

​公益財団法人愛知県農業振興基金  仲井理事長

  • 農業の活力という面において、現場で農業者の方が生計を立て、持続的に生産していく上では農業所得、それが県としては農業産出額の確保、拡大というところであり、最重要だと考えている。その中で先ほど食と緑のレポート2023の説明では2021年度の農業産出額が2,922億円ということで、2020年度よりは若干上がったが目標には達していないという説明であった。
  • コロナウイルス感染症の影響があった間の農業産出額ということで、影響を大きく受けたというのは理解するが、品目によっては観葉、鉢花類は巣ごもりの中で、逆に前より需要が増えて、花の市場から品物が消えるぐらい売れたというようなこともお聞きしている。そのような中で、もう少し品目別の状況の把握と分析、そしてそれを受けて今後、農業産出額3,150億円の目標に向けて何か考えがあれば教えていただきたい。
  • そして、要望となるがその他に3点ある。1点目は、生産性向上には、スマート農業技術など、これまでの延長線上にない、いわゆる生産性を高める技術のイノベーションが必要だと言われている。一方で持続的な環境ということで、国からもみどり戦略というものが出てきた。CO2の削減、温暖化対応というところだが、生産性の向上と環境維持は、相反する部分がとても大きい課題、テーマだと思う。国のみどり戦略の計画にも示されているとおり、ベクトルが逆を向いているところのものを、生産性を上げながら環境にもやさしいという、肝は何かというと、技術のイノベーションだということで整理されている。もうすでに取り組んでいただいているが、農業技術のイノベーション、生産性の向上と、そして持続的な環境を両立する、というイノベーションを是非とも研究開発し、できた暁には迅速な現場への普及を進めていただきたい。
  • 2点目について、私どもは農地中間管理機構ということで、県から指定を受けて、農地の利用集積をさせていただいている。農業経営基盤強化促進法が今年改正されて、将来的にこの中間管理に農地の集積集約化が一本化され、それに伴って、今年から2年間の間に、市町村がこれまでも作っていた人・農地プランをより具体に、農地一筆あたりに、誰がそこを耕し、担い、どういうものを作っていくのかという細かいところまで落とし込んだ形で、地域計画を作るという流れになっている。これは今後の農業生産振興をする上で大事な計画になると思うので、県の農業水産事務所の農政課、農業改良普及課においては、すでに中間管理事業の推進員ということで、連携をとって進めていただいているが、さらなる実効性のある計画となるように指導・支援をお願いしたい。
  • 3点目は、先ほど愛知県農業協同組合中央会の加藤委員からもお話があったが、先が見えないが大事な課題として、食料・農業・農村基本法改正の議論の中で「平時からの食料安全保障」の定義がされた。そのための課題としては適正な価格の形成、現場の生産コストの増加分を価格にしっかり転嫁できるようなシステムを作っていくということだが、生産から流通まではそのようなシステムが整ったとしても、コストが乗った末端の店頭での価格は必然的に上がり、そうしたときに、これまでどおり安い輸入農産物が陳列棚の隣には並んでおり、農産物を選択するときに価格が消費者の行動に関わるところがとても大きい。消費者の理解を得ながらそのシステムが回るためには、これまで食育ということで地産地消等の活動はしてきているが、フードロスや、農業者の思い等が消費者の方に理解いただけるような食育をさらに深化させて、県民の皆様全体の食料安定供給に関わる意識レベルがさらに高まるように取り組んでいくことが大きな課題であると感じている。国でも協議会が立ち上がったと聞いているが、何か動向があれば教えていただきたい。​​

トヨタ自動車株式会社アグリバイオ事業部農業支援室  灘波主査

  • 私どもトヨタ生産方式というものを使い、応用して、主に農林畜産業の方々の生産現場の生産性向上の支援をお手伝いさせていただている。そういう中でこの場に参加させていただいている。今日はせっかくの機会なので質問というよりは提案に近いと思うが2つほど挙げさせていただく。
  • 1つ目は2025年に向けた食と緑の基本計画を進めるに当たり、各分野でいろいろなプロジェクトの取組がかなり具体的に書かれていてすごく分かりやすい。昨年は、数字が分かりづらい等さまざまなことを申し上げたがすごく分かりやすいため、加えて、目標値の達成を目指すために、もう少し項目ごとに全体のマイルストーン(節目のポイント地点)とそれに対する進捗スケジュールが見えるようにすると、今の時点でどうであるかということが見やすくなっていくのではないか。2025年までに何をやるというのではなく、それのための今はどういう状況かというのが項目ごとに見えると、管理する側も、見ていただく県民の方々にも理解されやすいのではないか。
  • もう1つは先ほども少し環境の話があったが、私どもは生産者さんと愛知県や県外でもいろいろと接する機会があり、その中で、SDGsとCO2の削減というところも、生産性向上や原価低減に対して非常に効果的な部分であり、「現在では肥料が高騰しているため肥料の削減をしましょう」とか、「燃料代が上がっているので費用の削減をしましょう」など、無駄遣いをしていないかということを、よくお話をさせていただいている。そういう中で感じることが、生産者さんは知らないところで、たくさん取り組まれているが、残念ながらその努力は、自分の会社経営の中での提言や、生産性を上げるというようなこととしては身になっているが、国も県もSDGsやCO2削減というふうに旗を振っている中で、現場の努力が全然見えないのではないか。せっかくなので県の施策だけでなく、それに加えて皆さんがやっている取組をPRしたり、それによって作っていたり売っている現場の皆さんが、何かメリットを受けられる形、例えば企業でカーボンクレジットという取組がされているが、農業生産者が「カーボンクレジットってなんですか」というぐらいのレベルだと思うので、何かやると、それに対して何か返ってくるというような仕組みを作ってあげるということも、一つ大事なことと考えている。
  • 特に質問ではないが、そういうことも今後の計画に織り込んでいただくようなことも考えていただきたい。

愛知県森林組合連合会  平松​代表理事専務

  • 私からは森林、林業分野について発言をさせていただく。
    県では、2025年に県産木材生産量を年間18万立方メートルとして目標を掲げているが、この目標を達成するためには、様々な施策を総動員して進めていく必要がある。中でも林道や作業道は、木材生産にとって必要不可欠な施設であり、その整備は非常に重要である。
  • ​さて、この林道であるが、先ほど御説明いただいたこの食と緑のレポート2023の5ページにある進捗管理指標の中段の(2)災害に強く安全で快適な環境の確保の中で、㉕の農林道の整備・保全延長のうち、林道については24.0kmの目標に対して実績は35.1kmと目標を大きく上回っており、県をはじめ関係各位の御努力に敬意を表したい。
  • ​先ほど、鈴木農業水産局長の御挨拶の中にもあったが、去る6月2日の梅雨前線及び台風2号に伴う線状降水帯の発生による豪雨では、三河地域を中心に住宅・農地の浸水や土砂災害など、大きな被害を受けた。林道も被害を受けており、5路線の災害復旧費として1億2900万円ほどの補正予算を組んでいただいたと聞いている。日々、林道を使って木材生産に従事している我々森林組合系統や林業経営体にとってまことにありがたいことである。早期の復旧をお願いする。
  • この林道や作業道がひとたび災害を受けると、復旧するまで当分の間、山に入ることができなくなり、作業機械が現場に取り残されたままになったり、山土場に集積されていた原木が出荷できなくなったりということになる。今後、高性能林業機械による主伐をはじめ、利用間伐や再造林用の苗木、獣害対策資材の運搬や森林の手入れ、日々の所有森林の見回り管理のためには、林道の新規開設はもちろんのこと、常に、道路として使える状態にしておくということが、さらに重要になってくると考える。
  • そこで県として林道の開設及び維持管理を含めた、災害に強い林道の整備について、今後どのような施策を展開されていくのか、お聞かせ願いたい。

愛知県漁業協同組合連合会  間瀬代表理事常務

  • 私からは、水産業について、質問というよりは要望として発言させていただく。
    水産業については、水産業の生産力強化として食と緑の基本計画2025の重点プロジェクト3にも掲げられているが、県においては、稚魚の育成の場となる干潟浅場の造成や栽培漁業センターでの新規魚種の生産に向けた新棟の建設、またカキやアサリなどの新たな養殖技術の普及など、様々な施策に取り組んでいただいているところである。しかしながら、伊勢湾・三河湾においては、年々厳格化されてきている排水規制により海は非常に青くなり綺麗になったが、その反面、海の生き物が生育していくための餌や養分が不足し、すなわち、窒素やリンなどの栄養塩類が乏しい状態となっており、ノリの色落ちやアサリ資源の減少などの魚介類の生育不良により、漁業生産量は減少してきている。
  • ​県においては、昨年度から今年度までの2年間で、三河湾において下水道放流水の窒素、リンの濃度を緩和させる社会実験を実施していただいている。現場の漁業者からは、浄化センター近くの漁場では、ノリの色調は良くなり、アサリ資源も回復傾向にあると報告が来ている。
  • ​社会実験の成果として明らかに効果が上がっているので、三河湾での実験も2年間にとどまらず、来年度以降も継続的に実施していただくとともに、深刻な状況が続いている伊勢湾についても、漁業生産に必要な栄養塩類の確保にスピード感を持って取り組んでいただくよう、お願いしたい。

愛知県農業経営士協会  山本副会長

  • 農業全般に対する様々な取組をしていただていることに農業者を代表してまず、お礼申し上げる。また、ウクライナやコロナの問題から発生した燃料の高騰や飼料価格の値上がりに対しても、他県と比べてかなり手厚い御支援をいただいており、重ねてお礼申し上げる。
  • 私からは、農業全般、他の産業もそうであるが、雇用の問題について申し上げる。今回の県の取組の中でも、農業経営者の育成に取り組まれているが、最近は農業自体、規模というか、経営体自体が以前に比べて大きくなってきており、雇用労働者を入れる農業者や農業法人が増えてきている。そのような中で、とにかく働き手が欲しいからと、その人を見ずに雇用してしまうと、半年、1年働いた後に、残業代が払われなかったとか、パワハラがあったとか、いろんな問題が起きたり、ひどいところでは訴訟を起こされたりといった事例もある。正社員なら当然であるが、パートやアルバイトでも労使の契約とか、就業規則を作るとか、残業は時間給にするとこうなるとか、そういったことを農業者、経営者がしっかり勉強しなければいけないと思っている。
  • 私も今10人の正社員がいるが、就業規則を作る中で、初めに社会保険労務士へお願いしたときは、完全に労働者に対して有利な就業規則になってしまった。それも大切なことであるが、就業規則を作ることによって、労働者だけでなく、経営者にとっても農業経営に有利に働くような、農業専門あるいは専門の知識を有する社会保険労務士を農業者に紹介するといったことや、農業経営者と労働者の契約について指導があればと思っている。これは県に対しての提案である。

愛知消費者協会  吉田会長

  • 他の委員からも御意見があったが、いろいろな場面で物価が高騰しており、消費者としては、価格が非常に気になるところである。昨年度、地元の農協組合長などを招き、消費者協会で農作物の適正価格について勉強会を開催した。そうしたところ、会員皆が農産物の適正価格とは何かということをきちんと理解する場がとても必要だということが分かった。もっと多くの会員に理解してもらう機会を作ってほしいという声があった。私たち愛知消費者協会は、県内に5支部あるが、それぞれの地域で、農産物の価格がどのように決められているのか、農業者側の話をきちんと聞くような勉強会を継続して実施していきたいと思っている。こういった事業について県と協働できるようなことがあれば協力をお願いしたい。
  • 次に、流通の問題でも、いろいろな価格が値上がりすることが想定される。農業者の方々は、今までのやり方が間違いではないが、そればかりでは経営が難しくなっていくと思われる。農家の一戸一戸が企業として、他業者と交流したり、連携したりして事業を広めていくような新しい形を考えていかなければならない時期に来ているのではないかと感じている。県として何か新しい取組があれば教えていただきたい。
  • それから、米の消費が減少していることに関して、消費者協会の会員も大変心配している。現在使われていない田んぼがどうなっていくのか、よりよく活用できるようなことを考えているか伺いたい。
  • ​また、農産物の安全安心の確保の点で、国産であれば消費者として安全安心にいただけるのではないかと思っている。そのような中で、更に無農薬や有機といった農産物があるが、その違いが一般の消費者にはわかりにくく、消費者が違いを理解して選ぶことができるようになれば、農業者の努力も、実ることになり、国内でのより多くの消費につながるのではないかと思う。
  • 最後に若い方に聞くと、安ければ買ってしまうというようなことも聞く。それは生活面からすると大事な観点でもあるが、農業の新規就労者や働き手を増やしたいということであれば、賃金や就労時間のことも今後はしっかりと考えていく必要がある。何か県としての考えがあれば、お聞かせいただきたい。

オーガニックファーマーズ名古屋  吉野代表 

  • 私からは3点質問させていただく。1点目が、新規就農者に向けた就農後の支援についてである。
    愛知県農業協同組合中央会の加藤委員の御意見と重なる部分もあるが、愛知県の44歳以下の新規就農者は、2017年をピークに減っている。高齢化した農家の自然減が激しく、新規就農者が多少増えたくらいでは現状維持さえ難しい状況にある。就農しても定着できずに離農する人も多いのではないかと想像している。県が新規就農後に離農した人の数字を把握しているのであれば教えていただきたい。

  • 自分自身が関わってきた有機農業の新規就農者を見ていると、定着のポイントは、就農前後のサポートにあると感じている。新規就農者は、条件不利な農地しか借りられないことが多く、そうした条件による苦労も多いと感じており、何とか少しでも条件の良い農地が借りられる状況になっていくよう、切に願っている。また、研修で身につけた技術をステップアップしていく難しさや、有機農業の場合は、販路も自分で探さなければならないなどの問題点もあり、そうした部分の支援があることで、新規就農者の定着率は高くなると確信している。就農前から就農後に至る技術、販路、精神面などについての県としての具体的な支援策をお聞かせいただきたい。また、そうした支援が難しいということであれば、その理由も聞かせていただきたい。
  • 2点目は、愛知県農業大学校における有機農業コース設置の可能性について、有機農業の面積を広げるに当たっては、慣行栽培農家の有機農業への転換、そして有機農業で就農する新規就農者を増やしていくことが必要で、そのためには、農業大学校を活用した人材育成や技術習得が必須と考えている。全国を見ると、埼玉県、山梨県、島根県の農業大学校では、すでに有機農業を学ぶコースを設置されている。2021年に愛知県の農起業支援センターに相談に訪れた相談者のうち、新規就農希望者は280人で、そのうち有機農業の希望者が25人、2022年は相談者278人のうち、有機農業の希望者は17人となっている状況である。かなり難しいとは思うが、愛知県農業大学校に有機農業コースを設置する可能性について県の考えをお聞かせいただきたい。
  • 3点目は、愛知県における有機農業に関わる推進計画についてである。昨年、みどりの食料システム戦略が法制化され、国の方針として有機農業の推進が位置付けられた。それに関連して、今年の1月には愛知県有機農業推進計画が一部改正され、そこには私の所属するあいち有機農業推進ネットワークと連携して推進していくことも位置付けられており、今後もしっかり連携して有機農業の推進に取り組んでいきたいと思っている。推進計画には、有機農業に取り組む面積を2020年の330haから2030年には900haに増やすと記載されているが、2021年は356haと微増状態にとどまっている。この目標を達成するためには、2030年に向けて新たに544ha増やす必要があり、現在の約1.5倍にあたる面積を7年間で劇的に増やすことは非常に大きな課題である。愛知県有機農業推進計画には、あまり具体的な方策が記載されていないが、有機農業の面積をどのように増やそうとしているのか。また、目標達成のためにはバックキャスティングで取り組んでいく必要があると思っているが、達成の見通しついてどのように考えているか、お聞かせいただきたい。またこれに関連して、愛知県有機農業の推進に関わるここ数年間の予算の推移及び今後の有機農業に関わる予算と配置する人員について、具体的にお示しいただきたい。

欠席した構成員の意見について事務局から紹介

東海学園大学ともいき教養教育機構 副機構長 教育学部​  杉山教授

  • 愛知県で今年6月に発生した豪雨災害では、BCPについての重要性が再認識されたと思う。中小企業でも早くからBCPの策定に取り組んでいるが、これは中小企業が加盟する団体がBCPの研修を実施するなど、いち早く体制を整えてきたためである。愛知県でも、東三河地域の施設園芸農家を対象とした研修会を開催しているようだが、農業分野でも今後BCP策定のための体制を進めていく必要があると考えている。そこで現在の農業分野におけるBCPの策定がどの程度進んでいるかを伺いたい。また、BCPの策定の取組を加速させていくために、今後の県の取組方針について伺いたい。
  • 農業分野での脱炭素の取組を進めていただきたいと考えている。食と緑のレポート2023の緊急プロジェクトにおいて、燃油の使用量を削減に資するヒートポンプの導入を支援してきた一方で、燃油価格高騰対策として燃料費の価格差を補填する施策は、脱炭素の取組から逆行しているようにも見える。現状、様々な資材が高騰する中で、難しいこととは思うが、農業分野における脱炭素の取組と、燃油価格高騰対策をどのように折り合いをつけて進めていくのか、県の考えをお聞かせいただきたい。
  • 県環境局が2022年12月に改定した「あいち地球温暖化防止戦略2030」の別冊である「愛知県機構変動適応計画」には、農林水産部門についても、気候変動によるリスク評価や今後の取組方針などが記載されている。今年6月に愛知県でも豪雨災害があったが、気候変動に対する取組については、他局が取り組む対策とも連携しながら、しっかりと取り組んでいただきたい。

県側の発言

農政課長

  • 始めにJA愛知中央会の加藤委員と、農業振興基金の仲井委員から御意見、御質問をいただいた産出産出額についてまとめてお答えする。
  • 2021年の本県の農業産出額は2,922億円で前年より29億円増加している。なお都道府県別の順位は前年と変わらず、第8位となっている。品目別では、米は233億円で前年より41億円減少しているが、これは作付面積の減少による収穫量の減少、新型コロナの影響による米価の低下によるものである。
  • 次に、野菜は1,031億円で前年より20億円増加した。これは、本県の主要野菜であるイチゴ及びトマトの産出額が増加したことによるものである。花きは542億円で前年より45億円増加した。歳出額の約4割を占めるキクは前年並みであったが、仲井理事長からお話があった、観葉植物、バラ、カーネーションの単価が上昇したことにより、増加をしている。また、畜産は840億円で前年より9億円増加した。新型コロナによる巣ごもり需要が一服したことから、豚が38億円減少した一方で、価格が上昇した鶏卵が39億円、肉用牛が16億円とそれぞれ増加したことなどによるものである。
  • ​県としては、これらの産出額の内訳をさらに分析し、引き続き、農業の担い手の確保や施設整備の導入支援、農業イノベーションの推進等により、生産力強化に資する施策を重点的に進めるとともに、県産農林水産物の需要拡大に向け、いいともあいち運動など、消費者の理解促進に係る施策を進めることにより、農業産出額の目標の達成に向けて努力していく。
  • 次に東海学園の杉山委員から御意見をいただいた、農林水産部門における気候変動対策についてお答えする。農林水産部門の気候変動に関する取組については、食と緑の基本計画2025において、気候変動への適応等の環境変化に対応した農林水産技術の開発や、農業水利施設の防災・減災対策などに取り組んでいるところであり、その方向性については、御意見のあった「愛知県気候変動適応計画」にも盛り込まれているところである。気候変動や防災減災の対策は全庁的に取り組む必要があることから、総合的かつ計画的に推進していけるよう、今後も関係各局と情報共有を図り、連携して進めていく。
  • 次にトヨタ自動車の難波委員から御意見をいただいたプロジェクトに係る各取組に対するスケジュール感の見える化についてお答えする。食と緑の基本計画2025における5つの重点プロジェクト及び緊急プロジェクトについては、現状PDCAサイクルの視点に基づき整理をしている。御意見のあった、プロジェクトに掲げた各取組のスケジュールの見える化、いわゆるロードマップの作成についても、プロジェクト全体の進捗状況を把握する上で重要な観点であると思わる。計画時にロードマップを作成し、進捗管理をすることが効果的であると思われるので、次期食と緑の基本計画を策定するにあたり、御意見を参考に、ロードマップの導入について検討していく。​​

食育消費流通課長 

  • それでは最初にJA愛知中央会の加藤委員からいただいた県民消費者が愛知の農業を応援する仕組みづくりに係る御要望についてお答えする。県民の方々に、愛知県の農林水産業の応援団になってもらい、消費者と生産者が一緒になって、愛知県の農林水産業を支えていこうという「いいともあいち運動」を県では1998年度から実施している。またこの運動は、県民の方々にもっと県産農林水産物を食べていただきたいという、本県版地産地消の取組でもある。今後もこのいいともあいち運動を関係者の皆様と連携し、より一層進めていくことで、本県農林水産業の理解促進を図り、県民消費者の方に、応援していただき、その上で、本県産の農林水産物を選んでいただけるよう努めてまいりたいと考えている。
  • 次に永和中学校の櫛田委員からいただいた、農業体験活動の充実についての御質問についてお答えする。なお、この件に関しては、JA愛知中央会の加藤委員からも、食農教育の重要性の御意見をいただいているので、あわせて御回答させていただく。本県の「あいち食育いきいきプラン2025」では、食を通じて豊かな心を育むため、様々な体験や交流を通じた豊かな人間性の育成と、食の理解促進を図る取組として、子どもたちによる栽培や収穫などの体験学習が、農業者などの地域の人材と学校との連携により、計画的に展開できるような環境づくりを推進している。県農業水産局における具体的な取組としても、農林漁業の体験学習PRチラシ、その際に地域に協力いただける方をまとめた協力者一覧を全小学校へ配布をしている。またその際、各農林水産事務所から各小学校の方への働きかけも行っている。さらに農林漁業体験学習を円滑に実施できるよう、農林漁業体験学習実践マニュアルを、食育ネットあいちに掲載しており、こうした取組によって、進めていきたいと考えている。
  • 続いて親世代への食育指導の推進についてお答えする。子どもの食習慣については、親の影響を強く深く受けることから、親世代が栄養バランスなどの知識や、調理技術を身につけることが重要と考えている。日本人の伝統的な食文化である和食は、栄養バランスに優れており、健康的な食事スタイルであるが、手間がかかる、面倒といったイメージから、和食の料理や作法をどのように、次世代に継承していくかが課題と考えている。このため本県では、2016年度に地域で受け継がれてきた郷土の和食料理を選定し、それにまつわる歴史やいわれといったものをまとめた「あいちの郷土料理レシピ50選」を作成している。これを小中学校等にお配りして啓発を行ってきた。今年度はこの和食をテーマとした調理講習会やシンポジウムの開催を予定しており、調理講習会は、地域で活動する食育推進ボランティアの方の資質向上も目的としており、受講したボランティアの方が、成果を子育て世代の方に広く普及していくことを予定している。またシンポジウムについては、一般の方の参加も予定をしている。こうした取組により、受講された方が和食の良さを再認識し、家庭において和食を積極的に食事に取り入れることで、栄養バランスのとれた食生活に繋がることを期待している。
  • 次に農業振興基金の仲井委員から野菜等の農産物の適正価格の形成においては、消費者の理解醸成が重要といった御意見をいただいている。また消費者協会の吉田委員からも、非常にこの点は重要といった意見をいただいた。これに関して、先ほども中央会の加藤委員の御質問の際に説明させていただいたが、いいともあいち運動というのは、本県農林水産業の大切さについて、県民の理解を深め、生産者と消費者がいい友達の関係になる、これを目指している。生産から消費まで幅広い関係者からなる「いいともあいち推進協議会」という場を設けているが、生産者団体の皆様から、なかなか苦しい農業経営に関する御報告があり、出席いただいた消費者団体の皆様からは理解と共感の意見をいただいている。
  • 先ほど御意見のあった、国において現在農産物の適正な価格が議論になっているところであるが、やはりこの問題に関しては、県民、消費者の方の農林水産業に対する理解が最重要だと認識している。こうした、生産者と消費者の相互理解を深めるために、いいともあいち運動の取組を通じて情報発信、また相互理解の場所の提供に取り組んでいきたいと考えている。​

農業振興課長 

  • 農業振興基金の仲井委員から、市町村が中心となり策定する地域計画が、実効性のある計画となるような指導・支援について御意見をいただいた。県としては、市町村や関係機関と一層連携を深め、実効性の高い地域計画が各地域で策定されるよう、各種サポートをしていきたいと考えている。

農業経営課長 

  • 最初に愛知県農村生活アドバイザー協会の加藤委員、愛知県農業協同組合中央会の加藤委員、オーガニックファーマーズ名古屋の吉野委員から御質問いただいた、新規就農者の関係についてお答えさせていただく。
  • まず食と緑のレポート2023の4ページに書いてある新規就農者の数であるが、64歳以下の就農者で自営・雇用を含んだ数字になっており、2年間で372名である。これに関係し、まず定着の割合の関係について、県では意欲ある次世代人材を確保するために国の事業を活用し、就農前の研修及び、就農後に年間最高150万円の交付、就農直後に機械・施設の導入等の取組を支援する新規就農者育成総合対策に取り組んでいる。こちらの事業に2012年度から10年間で取り組まれ、就農された方の人数が724名である。このうち、残念ながら離農された方が99名であり、就農定着率が86.3%である。この離農した主な理由は、病気やけがで営農継続ができなかったといったもの、それから計画通り営農がうまくいかなかったもの、職場の人間関係がうまくいかなかったなどというような理由が挙げられている。
  • 次に、新規就農者に対する具体的な支援の関係について、県では2021年の4月に農業大学校に農起業支援ステーションを設置した。一元的に新規就農者、新規参入者の就農相談や技術習得の研修など、様々な情報提供を行うとともに、各農業改良普及課には、農起業支援センターを設置しており、こちらのセンターと連携しながら、新規就農者の確保と育成に取り組んでいる。新規就農者は機械・施設等への初期投資、農地の確保、技術の習得、地域に受け入れられるかなどといった不安があるという声を多く聞いている。県の農業改良普及課が中心となり、技術面においては、師匠となるような農家の方の確保・育成、新規就農者には、必要な技術等を習得できるような研修機関の認定、技術や経営管理に必要なカリキュラムの作成支援等を行うことで、新規就農者の営農継続への支援を行っている。また地域では、農業の担い手育成や、栽培の基礎などを学ぶ農業塾が開催されており、こちらの塾は定着に有効な方法であると考えている。県や市町村、農業団体、地域の農業者が一丸となって、就農前の研修、就農時の農地や施設のあっせん、就職のフォローアップを行う体制などを構築することできめ細かなサポートも行っており、このように新規就農者への具体的な取組を支援しているところである。
  • 続いて、愛知県農業振興基金の仲井委員から農業技術イノベーションの研究開発と普及に取り組むよう御意見をいただいた。県では、農業総合試験場を中心に、大学、スタートアップ等と連携し、産学官連携によるイノベーション創出に向けて、2021年度から「あいち農業イノベーションプロジェクト」に取り組んでいる。昨年度2022年度には、公募によりスタートアップ等の19社、18課題を選定して、農業総合試験場との共同研究や、現地実証などを進めているところである。今後、絶え間なくイノベーションを創出できるよう産学官連携体制を強化するとともに、開発から社会実装までを一体的に推進することで、新技術、新品種の早期の実用化に向けて取り組んでいきたいと考えている。
  • 続いてトヨタ自動車の難波委員からいただいたSDGsに関する取組の関係である。国では、持続可能な食料システムの構築に向けて、2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定した。この中で、カーボンニュートラルなど、環境負荷低減に向けたイノベーション創出に取り組むこととしている。県内では生産者のレベル等でもこのような取組を進めているが、地域レベルの取組というのも非常に必要だと思っている。CO2のゼロエミッション化、化学農薬や化学肥料の使用量の低減、有機農業の拡大など、各産地が抱える課題を解決するために、ロボット、AI、ITなど先端技術を活用した現場での実証を行っており、2022年度からは9産地でこういった取組が行われている。この取組では、導入機器の選定から導入後の生産技術の改善など、様々な検討を行う必要があるということで、県を始め生産者、農業団体に加え、専門的な知識を持った民間企業等々の協力を得て、研究会を組織し、地域の実態に合った取組を進めているところである。なお、このような実証で得られた成果については、グループ内での共有はもとより、県のホームページで取組を掲載しており、広く情報共有を図っているところである。難波委員からも御意見いただいたように、こうした取組自体は、生産者のみならず、県民の皆様にも広く知っていただくよう努力を進めてまいりたいと考えている。
  • 続いて、愛知県農業経営士協会の山本副会長から御質問をいただいた、雇用の確保の関係について、農業分野においても、規模拡大、法人化が進められている中で雇用の確保というのが喫緊の課題になっているという認識をしている。こうした中、県では農業経営の法人化や、農業経営の確立発展を促進するために、農業経営者の方々に対して、経営相談や診断を行うとともに、中小企業診断士、それから御意見いただいたように社会保険労務士、税理士など、それぞれの課題に応じた専門家の派遣や、巡回指導を行うという取組を行っており、県に農業経営・就農支援センターを設置している。もちろんこの中でも雇用関係について相談等を受けているところであり、相談に関するサテライト窓口ということで、各農業改良普及課と県内のJAに窓口を設置しているので、活用いただきたい。
  • 最後になるが、オーガニックファーマーズ名古屋の吉野委員から御質問のあった有機農業の関係についてお答えする。まず、農業大学校における有機農業コース設置の関係について、県では有機農業を環境と安全に配慮した農業の一環として位置付けをしており、農業大学校においても、環境保全と農業を科目とし、有機農業の講義を行っているところであり、毎年こういった講義内容の充実を図っている。御意見いただいた専攻の関係について現在、作物、野菜、果樹など、品目単位で8つの専攻のコースがある。有機農業については品目横断の取組ということもあり、こうしたコースの設置に当たり、カリキュラムの見直しや施設の利用、圃場の見直し等、いくつかハードルがあるというふうに考えている。今後、いろいろな方々の御意見を伺いながら、有機農業コースの設置の可能性についてはいろいろと検討を進めてまいりたいと思っている。現時点ではできる、できないというのではなく、この可能性を検討してまいりたいというレベルで考えているのでよろしくお願いする。
  • 次に有機農業の推進の関係について、消費者協会の吉田委員からも御発言いただいたように、本県では有機農業に取り組む面積を、2030年に900haとし、現在の2.5倍以上に増やす目標を立てている。取組面積の拡大に向けて、栽培技術の開発・普及、有機農業者の定着支援、消費者等々の理解促進、モデル産地の育成など、県はもとより農業団体や消費者団体等々とも連携しながら取り組んでいく。ただし、目標についてこのような取組を掲げているが、具体的な取組をどのように行うかということは、県の中でもどのようなことができるかを現在検討しているところであり、県はもとより、有識者の方々にも、いろいろな意見を伺いながら、具体的な取組内容等について今後検討してまいりたいと考えている。
  • 最後になるが、予算と人員の関係である。まず予算の関係について、当初予算ベースであるが、2020年度に1,369,000円、21年度に3,499,000円、22年度に22,052,000円、2023年度に26,849,000円ということで、毎年増額をしながら有機農業に対応しているところである。今後も引き続き、国の予算等も活用しながら、いろいろな取組を進めてまいりたいと考えている。
  • また人員の関係について、2020年度以降、現場で指導する普及指導員が国の有機農業研修を受講している。現場で有機農業に取り組む生産者に指導ができるような支援体制を整備するところである。2020年度には2名、2021年度に5名、2022年度には12名ということで本年度も前年同様の研修の受講を予定している。各普及課においても有機農業を指導できる人員を確保させていただきながら、現場の中での普及に努めてまいりたいと思っているのでよろしくお願いする。

​園芸農産課長 

  • まず東海学園大学の杉山委員からの御質問2点について御回答させていただきたいと思う。まず1点目が農業分野のBCPの関係について、本県では2021年度から、国の制度である園芸産地における事業継続強化対策の補助金を活用して、農業用ハウスの補強工事、あるいは非常用電源の共同利用を進めているとともに、自然災害リスクに対応するために施設園芸用BCPの啓発活動に取り組んでいる。この対策においては産地ごとでBCPを策定するということ、それから、農業ハウスの補強工事を行うという農業者については、BCPを策定するということが要件とされており、2022年度までに2つの園芸産地、47の施設園芸農家がBCPの策定を行っているところである。また、BCPの活動について、県関係機関、市町村、農業関係団体を対象として指導者向けの研修会を開催したり、施設用BCPのパンフレット等を作成し、農業者への周知に取り組んでいる。今年度も7月に東三河地域で施設園芸農家を対象としたBCP研修会を開催したところである。こうした取組を進めているところであるが、県内でBCPを策定した施設園芸農家の方々は、まだまだ多いといえる状況ではないので、今後もこうした国の事業を活用しながら、引き続き施設園芸用BCPの啓発活動に取り組み、そして施設園芸農家のBCPの策定の支援もしていきたいと考えている。
  • 続いて2点目の脱炭素の取組として燃油使用量を削減するヒートポンプ等の導入支援の一方で燃油価格高騰対策ということで、逆行しているのではないかというような御意見もいただいた。愛知県においては、施設園芸において燃油に依存した経営からの転換を進めるため、国の「施設園芸等燃料価格高騰対策」や「産地生産基盤パワーアップ事業の施設園芸エネルギー転換枠」を活用する他に、令和4年度については県独自で「施設園芸省エネルギー化施設整備事業」を措置し、ヒートポンプや被覆用のカーテンといった省エネの機器設備等の導入を支援し、化石燃料の削減に取り組んできたところである。こうした事業の活用により、令和4年度には県内の施設園芸農家にヒートポンプが180台導入され、平成25年までの約10年間でおよそ5,000台を超えるヒートポンプを導入しており、燃油使用量の削減は進んでいるものと考えている。
  • 一方で昨今、燃油価格が高騰しており、これが経営農家の経費を圧迫しているため、経費に占める燃料の割合の高い施設園芸農家において、非常に大きな影響を及ぼしていることから、燃油価格高騰による、農業者の負担を軽減するため、国の「施設園芸セーフティネット構築事業」あるいは県において「施設園芸用燃油価格高騰対策支援金」により燃油高騰の価格差の補填を行い、経営が圧迫されている農家の支援を行ってきたところである。そしてこうした国の施設園芸セーフティネット構築事業については、3年間で15%以上の化石燃料を削減することや、県の施設園芸用燃油価格高騰対策支援金については、前年比で10%以上の削減を行うことを目標することが必要となっている。いずれの対策においても燃油使用量の削減に積極的に取り組む農業者の支援を行うということになっている。なお、令和4年7月に、農林水産省が「環境と調和のとれた食料システム確立のための環境負荷低減事業活動促進等に関する法律」を施行し、みどりの食料システム戦略を推進することとしており、この中で施設園芸については、2050年度までに化石燃料を使用しない施設への完全移行を目指すということを謳っていることから、今後こうした農林水産省の施策とも連携しつつ、引き続き省エネ機器等の導入を進め、化石燃料の削減に努めてまいりたいと考えている。
  • それから、消費者協会の吉田委員から御質問をいただいた、お米の消費が減っている中での農地等の利用について、吉田委員御指摘の通り、お米の消費というのは非常に減少傾向にあり、これに伴い、愛知県の米の生産も減ってきている。令和4年産の米の作付面積は25,900haであるが、平成17年には32,000haであったということで、減少傾向になっているところである。一方で作付面積が減少することで農地が利用されなくなるのではないかということについては、国の対策として、経営所得安定対策という対策が行われており、戦略作物としてお米以外の作物も作っていこうということで、交付金等も交付しながら進めているとこであり、例えばお米の他に麦と大豆、つまりお米、麦、大豆という形で、2年で3作を作るというブロックローテーションという形で、お米以外のものを作る形や、飼料用米や米粉用の米を作っていくことで、できるだけ水田も有効利用されるように努めているところである。今後もこうした国の対策等も活用しながら有効利用を図ってまいりたいと考えている。

水産課長 

  • 県漁連の間瀬委員から御質問いただいた、漁業生産に必要な栄養塩量の確保について御回答する。間瀬委員から御案内いただいたように、昨今、海の必要な栄養が少なくなっているということで、県としては栄養をできるだけ増やそうという取組を進めているところであり、今後漁業生産に必要な栄養塩管理のあり方を検討するため、昨年9月に学識経験者、漁業者、県や国や市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議を設置した。検討会議においては、先ほど間瀬委員からも御紹介があった、三河湾で行っている社会実験、三河湾内の2ヶ所の下水道において、窒素とリンの基準を緩和して多く流そうという取組であるが、この結果を検証することとしており、今年6月に会議において、どのような結果であったか検証した。その結果として、ノリについては、やはり明らかに黒くなっており、色調が良くなった。また、三河地区のアサリについても資源量が増えているというような結果が出ており、加えて窒素やリンを増やして流したが、環境への悪い影響というのは特段見られなかったという結果があり、ノリ、アサリへの効果があったというように考えている。
  • この検討会議においては、これから伊勢湾も含めて、伊勢湾・三河湾の栄養塩管理のあり方をどのようにしていくかというのを、協議していくこととしている。先ほど申し上げた、社会実験については、2年間行う計画としており、今年も来月9月から、三河湾内の2ヶ所の下水処理場において、窒素とリンを増やして流すという2年目の社会実験を行う。来年度以降、栄養塩増加運転をどのように持っていくかという方針については、この2年間の社会実験の結果を踏まえて、検討してまいりたいと考えている。
  • ​なお、伊勢湾においては、基準の見直しはまだ行っていないが、昨年度、県の管理する日光川の浄化センターのほか、東海市、知多市、常滑市の計4ヶ所の浄化センターにおいて、基準の範囲内でできるだけリン濃度を増加させるという管理運転を行うよう御協力をお願いし、やっていただいたところである。本年度も引き続き、この取組に御協力いただけるよう、現在、関係者と協議調整を進めているところである。間瀬委員から御要望いただいた三河湾における社会実験を、3年目以降も継続して欲しいという御要望、それから、伊勢湾についても取組を強化していただきたいという御要望については、検討会議に出席された漁業者委員からも同様の要望を伺っている。栄養塩を増やす取組については、農業水産局だけではなかなか難しい問題もあるので、その他の関係者としっかり検討して、漁業生産に必要な栄養塩量の確保、豊かな海の再生に向けてしっかりスピード感を持って検討してまいりたいと考えている。​

農地計画課長 

  • 愛知県土地改良事業団体連合会の佐藤委員からの多面的機能支払制度に関する質問についてお答えする。活動組織の縮小を防ぎ、より効果を発揮していくための県の考え方については、予算の確保が重要と考えている。以前から、多面的機能支払制度の3つの活動において、基礎的な保全活動と、質的向上を図る共同活動については、要望額に対し満額を確保できている状況であるが、施設の長寿命化活動については、満額の確保はできていない状況である。農業、農村の有する多面的機能の維持発揮を図るためには、老朽化する農業インフラの長寿命化対策は喫緊の課題であるため、引き続き、国へ要求し予算確保に努めていく。
  • また、使い勝手のよい事業制度も重要と考えている。現行制度では、例えば、水路の草刈と農道の草刈が、別の活動となる等活動区分が細分化され、単価の設定や、加算措置が複雑になり、報告書作成等の事務量が増えることが活動組織の負担となっている。県としては、より取り組みやすい制度となるよう、国の施策評価の機会をとらえて、制度の単純化と、事務の簡素化の具体案を取りまとめ、国へ報告することを予定している。
  • 以上が県の方針であるが、活動組織から一部事務を受託している愛知県土地改良事業団体連合会の協力なくして推進はできないため、今後とも連携を密にして取り組みたいと考えている。​

森林保全課長 

  • 森林組合連合会の平松委員からいただいた、災害に強い林道整備についての御質問にお答えする。先ほど御紹介があったとおり、食と緑の基本計画の林道の整備・保全延長の目標については、上回って達成しており、これに関しては今後も引き続き林道の整備推進に努めたいと考えている。
  • また、6月2日の大雨については、県内の林道で30路線51ヶ所が被災し、被害額としては5億を超える額となっている。この災害については、6月補正で措置した国の災害関連事業を活用した復旧だけでは十分ではないところもあるため、今後は県の単独事業等も活用して、早期復旧に向けて手続きを進めてまいりたい。近年の林道災害を見ると、線状降水帯の発生等により、施設の排水機能を超える降雨に起因した災害が多くなっているということが見受けられる。これを受けて、県としては各種事業で、排水施設の適切な設置や機能強化などを進めているところである。
  • また、先ほど御指摘の中に林道の維持管理についての話があったかと思う。維持管理については、橋梁等の施設について長寿命化計画に基づく個別施設計画を立て、5年ごとに点検を行い、必要に応じて改修等を行うなど、適切な管理に努めているところである。県としては、航空レーザ計測という技術を使い、詳細な地形情報や森林資源情報の整備を県内全域について完了しているところである。また、路網設計支援ソフトというものを開発しており、現地に出向くことなく様々な路線の設計を机上でシミュレーションできるため、ソフトを開発して、林道の管理主体となっている市町村や森林組合等の各種関係者が、こういったソフトを利用できる体制を整えている。
  • このソフトを活用すると、災害発生の恐れのある箇所を回避するような地形に即した、被災しにくい路網の整備が可能になるため、県としてはソフトの利用拡大を図っていくとともに、引き続き国の補助事業や県の単独事業を活用して、林道の開設や機能強化に向けた事業を効率的に進めていくことで、災害に強い林道整備を進めてまいりたいと考えている。​

 

座長総括

徳田座長 

  • 今回、様々なお立場の構成員の方から様々な御意見をいただいた。すべて網羅された形で取りまとめることはできないので、それぞれの意見を踏まえた上で、今後の計画等の推進をお願いしたいと思う。その上で、私自身の意見感想も踏まえて4点ほど申し上げる。
  • 1点目は、多くの委員の方から担い手に関する御意見があった。担い手ということでは農業、おそらく林業や水産業も同じかと思うが、経営の担い手だけでなく、資源管理の担い手や、あるいはいわゆる労働力というようなものも含めて、農林水産業に関わる様々な担い手があり、いずれも現在、不足や非常に様々な問題を抱えているかと思う。そういう意味では、いわゆる経営の担い手のみでなく、様々な場面での担い手も含めて、ぜひ今後確保等を進めていただきたいと思う。
  • 2点目は、生産基盤整備に関して、これは広い意味で捉えれば林道や水産における栄養塩量の確保というものも生産基盤の中に含まれるかと思うが、これらについても意見があったかと思う。特に生産支援に関しては、単に生産性の向上ということのみではなく、環境の保全や防災という面から見ても非常にその役割は現在大きくなってきていると思う。その点で当然、生産性の向上が大事ではあるが、環境保全や防災面で特にこれらの施設が老朽化していることも課題である。ぜひこの辺りも踏まえて計画的な整備を進めていただきたいと思う。
  • 3点目は、いわゆる適正価格について何人かの委員の方からも発言があったが、今、国で進められている食料・農業・農村基本法の検討の中でも、適正価格ということが議論の中で出てきている。適正価格ということ自体、どういうものかということは、今後さらに詰めていく必要があり、そもそもどういう形でそれを実現するか、具体的な中身や方策、仕組みについて今後さらに議論を進めていく必要あるかと思う。
  • また、併せて価格との関連で産出額に関しても、意見があったかと思う。これについては、私自身の感想も踏まえてであるが、産出額を見ていく場合に今回、特に価格との関係が非常に大きく影響している。品目によっては非常に大きく上昇していたり、またその一方で、非常に低迷していたりというようなものもある。そのような価格変動による影響があると、単純に金額のみでとらえきれないということもある。また現在、資材価格が高騰している中では、同じ産出額であったとしても、生産側から見れば、その中身については大きく違う場合がある。そのような意味で産出額目標に関しては単にその数値のみでなく、その中身も踏まえて、今後検討していただければと思う。
  • 最後に4点目として、消費者の理解あるいは食育ということも踏まえてになるが、この点も幾つか意見があったかと思う。特に愛知県は、農業県であるとともに大都市圏でもあり、生産者と消費者が近い場所にいるということで、全国で見ても消費の理解あるいは、消費者や生産者、様々な立場の人たちとの連携が最も進みやすい地域であると思う。食料・農業・農村基本法の検討の中でも、フランスやイギリスの政策の事例を参考に地域の様々な関係者が連携した形で地域の食と農をつなげるような仕組みづくりが議論されると思っていた。おそらく愛知県は、日本の中においてこのような仕組みづくりが最も進みやすい地域であろうと思うので、ぜひ消費者や生産者、さらには流通業者や様々な関係者を踏まえての連携や、協議というものを積極的に進めていただきたい。

次第 [PDFファイル/69KB]

資料 [PDFファイル/7.25MB]

 

 

 

関連コンテンツ

Adobe Reader
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)