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平成29年度第1回愛知県義務教育問題研究協議会の概要
平成29年度第1回義務教育問題研究協議会を開催しました。
本会は、本県の義務教育に関する諸問題について、研究協議を行う協議会です。今回の会議では、平成28・29年度の協議題「グローバル化に対応した新たな英語教育の在り方」について、多方面から御意見と御助言をいただきました。その内容を報告します。
研究協議会の概要
日時:平成29年5月30日(火曜日) 午後2時から午後4時まで
会場:愛知県庁西庁舎 教育委員会室
1 開会
2 愛知県教育委員会挨拶(教育長)
3 委員等紹介
4 会長・副会長選出
5 会長・副会長挨拶
6 議事
(1)報告事項
○ 愛知県義務教育問題研究協議会の歩みについて
○ 平成28・29年度愛知県義務教育問題研究協議会協議題について
「グローバル化に対応した新たな英語教育の在り方」
(2)協議事項 (質問は「○」 回答は「→」 意見は「・」)
<リーフレットの改善と活用に向けて>
・ リーフレット「理念編」では、子供たちに身に付けさせたい態度・能力が明確に示されている。小学校の中・高学年でコミュニケーション能力をどのように育成していくのかが実践例と合わせて示されており、学校現場には伝わりやすいと感じた。リード文で現場の課題に触れられていると、教員が共感してリーフレットを読むと思った。
・ 小学校実践事例編では、教科化に向けた工夫、小中連携を意識した内容が示されており、県としての方向性が伺える。ただ、子供たちの現状を踏まえ、どういうことに気を付けて指導をしていくとよいかが載せられていると、教員の意識も高まると感じた。
○ 県教育委員会として各市町村の英語の取組、現状をどう認識しているか。
→ 教育課程特例校として一宮市、豊橋市、飛島村、岡崎市が独自に取り組んでいる。他にも、専門機関等と協力した研究に津島市や刈谷市などが取り組んでいる。
→ 現在の小学校外国語活動の授業では、ALTを招いている学校が多い。地域で英語の堪能な方を活用している市町村もある。4年生以下の外国語活動においては、取組に差がある。ALTを多く活用している学校では、10数時間位置付けている学校もある。先行実施に向けた研修に取り組み始めている市町村教育委員会が増えてきた。
○ リーフレットは、誰をターゲットにして作成したか。
→ 3・4年生の外国語活動が全面実施となることを考えると、担任が指導力を付けていくことが必要となる。ALTの活用も必要だが、担任の先生方が自信をもって指導できるよう、研修の一助となるよう願いを込めて、担任をターゲットに作成した。
・ A市は3年生以上で英語に取り組んでいる。隔週でALTが来ている。ALTが主で担任が補助の形で指導をする週と、ALTをモデルに担任が単独で授業を行う週がある。1・2年生は国際理解に関連させながら学期に数時間、英語活動を行っている。
・ リーフレットのリード文、3段落目の内容は中学校3年生の姿と考えられるが、見たときにレベルが高いと感じるのではないか。リーフレットの裏面、「中学校卒業時にはこんな姿に」では、「初歩的な」などの文言があり、ほっとするが、下の「話すこと(発表)」「読むこと」の内容は、かなりレベルが高いと感じる。
○ 次期学習指導要領の目標(3)で見ると、小学校中学年で「相手に配慮し」、高学年で「他者に配慮し」、中学校で「聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら」とある。各段階での指導の意図がリーフレットにどう表れているのか。
→ コミュニケーションの根底には、人に対するリスペクトがある。リスペクトと相互信頼を根底にしようというのを国の方針としている。各段階については、中学年でいう相手とは身近な相手、他者というのはもう少し広がる。中学校は「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を意識した上での相手となっている。
・ 学習の主体は生徒である。スキーに例えると今までは教室で本とビデオを使ってスキーの学習をした。次は全員ゲレンデに行くが、先生だけが手本を示していた。三つ目は転ぶかもしれないが、生徒にスキーをはかせて滑らせようということになった。今回、文部科学省がとったのは三つ目である。滑る道具としてのスキーのように、英語を身に付けるために、コミュニケーションの道具として英語を使おうということになった。
・ リード文に書いてあるのは中学校の姿ではなく、小中高が連携して社会に出てからこういう姿にもっていきませんかというものであり、日本の英語教育が目指すものである。これから英語を学ぶ子供たちが卒業するときには4技能が使え、先生たちも使えるようになる。そのぐらい大きく見ていきたい。
・ リーフレット表紙については読み手の感覚として小中の先生が読まれた場合に、一般的には生涯にわたった学習と思われない可能性が高い。抵抗感をなくしていくために、平易な言葉で書いていただきたい。「背景知識」などの言葉は、分かりやすい言葉に直したり、訳語をつけたりすることも必要かと思う。
・ 「背景知識」について説明したい。英語を聞いたり、読んだりしたときにすっきりとわかることはない。英語習得は曖昧さを徐々に減らしていくこと。その段階で必要なのは前後関係、文脈から推測すること。タイトルから物語の内容を推測したり、知らない単語でも前後関係から意味を推測したりする作業が大切であり、多分こうだろうという見当をつけて辞書を使うようにしたいということで、英語の専門用語を「背景知識」という日本語にした。
○ リーフレットは学校現場にどのくらいの拘束力があるか。
→ 特に拘束力はない。小学校英語の導入に当たっては課題があるので、その課題に応える形で編集している。各市町村教育委員会に対して、英語教育担当の指導主事を集める機会を年に2回もっており、その会議の中でこうしたものを提案し、研修等で活用してもらうようお願いをしている。
○ 小学校の実践事例では、Lesson4から始まっているが、その前の内容があるのか。
→ 文部科学省が「Hi,friends!」という教材を出しており、Lesson1~8までの内容がある。その一部を取り上げたものである。英語の授業時数が35時間から70時間になったときに授業をするのであれば、どう指導できるのかという内容を提案したものである。
→ 「Hi,friends!」に基づき、現行学習指導要領にも即して提案をしている。全面実施で教科書が出る前の移行措置の段階で、柔軟に対応できるものになっている。
・ 理念編は見てほしいという気持ちが伝わるものではない。イラストや写真も含め、文が敷き詰められているのは、読んでくださいというものではないと感じる。
・ なぜ子供たちが英語を話せないだろうという点に訴えるものでありたい。自分も仕事の関係で海外の放送局、団体と英語でコミュニケーションを取らざるを得なくなった。海外では、きれいな英語を話しているわけではないが、十分通じ合っている。今、日本に足りないのは、伝える面白さの仕掛けを作ることではないか。英語が分かるとこんなに楽しいということが分かる仕掛け、英語教育に未来を感じたり、興味をもったりできる仕掛けについて、もう少し書いてあるとよい。
・ B市では英語活動アシスタントとして日本人で英語が堪能な人を配置し、担任とともにゲームや歌の活動を行ってきた。英語に親しむという点でよい効果があり、中学校にスムーズに入ることができる。授業で学んだことをふだんの学校生活の中で使ったり、家で使ったりすると効果が上がるのではと感じた。
・ 普段から学級経営の中でも担任の先生が英語を使っていかないと、本当に話せるというところまではいかないのではないか。担任や親の関わりについてもリーフレットに載せていくとよいのではないか。
・ 週に1時間、年間35時間、また70時間やって英語がぺらぺら話せるようになるわけではない。しかし、授業中に小さな成功体験を通して、言葉は怖いものではない、使って通じたらうれしいという体験をさせること、動機付けと学び方をきちんと教えて、家の外、学校の外でも英語を求める人、さらに学校を卒業しても英語と触れ合おうとする人をつくろうというのが国の大きな方針である。
・ 英語で世界が広がり、社会とつながり、自分の人生を豊かにするために英語が生きるということを子供たちが考え、自分なりに答えを見付けていく教育にしたい。そういう意味で、学びの本質を変えていくことを提案したいと考えている。
・ A市で英語に取り組むときに、発音に自信がない担任が授業をしていいのかどうかが議論になったが、専門家を育てるわけではないので、それはよいということになった。
<子供たちが意欲をもって学び続ける評価の在り方>
・ 子供が英語嫌いにならないように親として意識し、英語教室に通わせた。英語への抵抗がなく、小さい頃から英語に接することの大切さを痛感している。評価を受ける側からすると、小学校の先生がきちんと評価できるようなリーフレット等を提供し、できるだけ先生が不安のない形で教科化のスタートを迎えてもらいたい。小3の外国語活動で親しみをもてれば、将来につながる。その段階で抵抗感がないようにしてほしい。
・ 子供たちが早くから英語に携わることはすごくよいことである。小3から始める子供と保育園から始めた子では差がついてくる。学年が上がるにつれてもっと差が開くこともあると思う。英語は楽しいと授業で伝えてほしい。
○ 評価というと捉えが広くなる。評価としてどんなものを考えているのか。
→ 子供が、今日はこんなことができた、今度はこんなことを頑張りたいというように自分の学びを振り返りながら、少しずつステップアップしていけるような評価をしていく必要があると考えている。どういう形で子供たちに声をかけ、支援をしていくか、子供自身が学びをどう次につなげていくことができるかを考えたい。数値が先に出るのではなく、子供たちにとって励みになるものは、どんなものがよいかを考えていきたい。
・ 豊かな学びを創るためには、子供の状況の把握と小中の連携がとても大事だと思う。C市では、外国語部会で小中の各校代表者が英語のカリキュラムについて話し合い、同じ中学校区の小学校同士でも情報交換をしている。中学校にとってもありがたい。
・ 授業中、子供たちをしっかり見取り、授業の姿から次へ進もうと背中を押してあげるような評価が大事であり、それが総括的な評価につながっていくと思う。
・ このリーフレットは現場の痛い所、かゆい所に手が届いている。英語嫌いにしないようゲーム等を取り入れながら進めるとよいことがよく分かる。中学校も先生方が困っているのは「話す」「書く」のパフォーマンステストであり、とても助かっている。一層充実を図れるとよい。
・ 自分の子供は、ALTと仲良くしたり、英検にチャレンジしたりしている。子供の頃から、外国籍の児童と自然に接したり、ALTとの会話で自然に英語を使ったりしている話を聞くと、そういう環境で育ったのだなと思う。幼少からやればよいというものでもなく、環境が育てていくのではと思う。
・ 大学の授業で、興味のある新聞記事を選んでスピーチし、その後グループで議論をさせた。海外旅行や留学をした学生は、海外のニュースに興味をもち、記事を選んできている。大学生でも外国の人に触れ合うと、うまく話せなくてもつながっていくコミュニケーションの面白さに気付く。きっかけは教育の中にあり、目覚めるのは大学生、社会人になってからかもしれない。そのときに本気になると思うが、早い時期に皆に平等に機会を与えるというのはすばらしいことである。
・ 学校の先生方には、子供たちにとって、そのような学びをもつ機会が将来の選択肢や自分の人生を豊かにしていくということをイメージしながら、その思いを大切に指導していただけたらうれしい。
・ 孫が小学校3年生なので、今後、英語を学ぶ様子を興味深く見ていきたい。
・ 米国で子供とともに2年間滞在し、帰国後も英会話に通わせたが、生活しているうちに英語を使わなくなった。継続はとても大事だと思う。小中の継続、高校、大学、興味のある人は社会に出てからもという形で進めていけるのはよい。評価については、嫌いにしてしまうとそこで道が絶たれてしまう。早く始めるなら、嫌いな子を早くつくるのではなく、好きになるように目配りをしてほしい。
・ 実践事例編の学習指導案で「うまく質問できない子には」という表記は「~するとうまく質問できる」、「振り付けがあって踊れる曲が望ましい」は「振り付けがあって踊れる曲にすると~できる」というような表現で書くとよい。
・ 英語を使うためには、日常生活とどう結び付けていくのかが大切である。若い先生が研究授業で道案内ゲームを行ったとき、ペアで順に行う予定であったが、みんなが一斉にやり始め、騒がしい中で相手に伝えなくてはならない状況になった。しかし、そちらの方が日常生活に近い。その中で、相手に伝えようとすると相手も聞く。その方が本当は使えるようになるのかと思った。
(協議のまとめ)
・ 評価をすることによって学習者が自信を失う、やる気を奪うのは意味がない。評価によって次への自信が得られて学ぶ意欲が湧いてくる評価にしたい。国の方針として、小学校の外国語科は数値による評価を行うと発表された。評価を研究する場合には、例えば、すごろくの4コース(聞く、読む、話す、書く)があり、それを皆が持っていて、自分の進歩の度合いが分かるようなものを提案できたらと考えている。
・ 単語が書けるかどうかで、子供のできる、できないを判断するのは英語嫌いをつくるだけである。知識の量や正確さではなく、何を伝えようとしているのか、人と関わって言葉を使おうとしているのかを長い目で見て、そのときに評価はどういうものであるのかを研究していきたいと思っている。
・ 広範囲で深い意見をいただいた。事務局で整理、焦点化して取り組んでいただきたい。
<専門部会の設置について>
<平成29年度愛知県義務教育問題研究協議会の事業計画について>
7 連絡事項
8 閉会の挨拶(学習教育部長)
9 閉 会