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深海魚「キンメダイ」を利用した魚醤(ぎょしょう)を開発しました ~食品工業技術センターと企業が共同開発~

ページID:0546180 掲載日:2024年10月10日更新 印刷ページ表示
9 産業と技術革新の基盤をつくろう14 海の豊かさを守ろう

 あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター(名古屋市西区。以下「センター」という。)は、2024年9月に喜栄丸(きえいまる)カベヤ水産加工(蒲郡市)と共同で、キンメダイ※1を利用した魚醤※2「深海ギョの魚醤 キンメダイまるごと」を開発しました。
 ここ2、3年は、形原漁港(蒲郡市)におけるキンメダイの漁獲量が増加しており、多く獲れた魚を活用することで廃棄を減らすことを主眼とした試みです。
 2024年10月12日(土曜日)から竹島水族館(蒲郡市)において販売を開始します。
 なお、本取組は、2022年度あいち中小企業応援ファンド(地場産業枠・農商工連携枠)※3の成果によるものです。

1 開発の背景、概要

 センターでは、地域ブランド製品を開発することを目的として、地元で水揚げされる魚を原材料にした魚醤の研究に取り組んでいます。
 2002年には、豊浜水産物加工業協同組合と南知多町の豊浜漁港で水揚げされるカタクチイワシを使用した魚醤「しこの露(つゆ)」を共同で開発しました。2017年には喜栄丸カベヤ水産加工の前身である壁谷(かべや)水産株式会社と深海魚メヒカリ※4を利用した魚醤「深海ギョの魚醤」を共同で開発しました。喜栄丸カベヤ水産加工は2022年度あいち中小企業応援ファンド(地場産業枠・農商工連携枠)に採択され、センターと連携して温醸※5を利用して魚醤の発酵・熟成にかかる時間を短縮する製法を2023年3月に確立しました。
 蒲郡市は、県内の9割以上の深海魚が水揚げされる深海魚のまちとして有名です。近年は、地球温暖化の影響などにより漁獲される魚種に変化が生じており、ここ2、3年は高級魚として知られるキンメダイの漁獲量が増加しています。一方で、漁獲されるキンメダイは加工に向かない小サイズ(体長20cm以下)のものが多く、有効利用について課題がありました。そこで、2023年に喜栄丸カベヤ水産加工からセンターへ相談があり、小サイズのキンメダイを有効利用した魚醤の開発に取り組むこととしました。

2 共同開発について

​ 魚醤は、魚に塩を添加して腐敗菌の増殖を抑えながら、魚体中のプロテアーゼという酵素によって、たんぱく質をアミノ酸に分解してうま味が形成された調味料です。この酵素反応は温度が低いと進行しないため気温の高い夏以外は分解が進行しないという課題がありましたが、ファンドの成果を活用し、熟成時の温度をコントロールすることにより、夏以外でも醸造可能となりました。さらに、従来方法では醸造期間が2年から3年必要なところ、9か月程度に短縮することができました(図1、2)。​

 

キンメダイ魚醤の開発

図1 キンメダイ魚醤の開発

 

                  キンメダイ魚醤の製法

​図2 キンメダイ魚醤の製法

 

3 「深海ギョの魚醤 キンメダイまるごと」について

   キンメダイの魚醤製品開発は、本県では初の試みです(全国では静岡県、東京都に次いで3例目)。開発した「深海ギョの魚醤 キンメダイまるごと」は以前に開発したメヒカリの魚醤に比べ、さらに全窒素※6の割合が高くなっています(表1)。
 うま味成分であるアミノ酸類は全窒素に含まれるため、うま味がより強く、また魚の風味が豊かなのが特徴です。また魚と塩のみで醸造するために炭水化物が少なく、着色の原因となる糖が少ないためメヒカリの魚醤と同等の淡い色合いをしており、煮物など素材の色を生かしたい料理に適しています(図3)。

 

表1 魚醤の栄養成分(100gあたり)
  キンメダイ メヒカリ 濃口醤油*
エネルギー 59kcal 50kcal 77kcal
たんぱく質
​(全窒素)
13.4g
(2.14g)
11.2g
(1.79g)​
7.7g
(1.35g)​
脂質 0.0g 0.1g 0.0g
炭水化物 1.4g 1.0g 7.9g
食塩相当量 20.6g 18.0g 14.5g

*日本食品標準成分表(八訂)より

 

魚醤の写真

図3 魚醤の写真
​1.キンメダイ魚醤
2.メヒカリ魚醤
3.濃口醤油

 

 

4 「深海ギョの魚醤 キンメダイまるごと」の販売について

   2024年10月12日(土曜日)から竹島水族館第2期エリア拡張グランドオープンに合わせ50本限定で販売します。また愛知県国際展示場で10月23日(水曜日)、24日(木曜日)に行われる「FOOD STYLE Chubu 2024発酵食品ワールド」のあいち産業科学技術総合センターブースで展示します。

○販売予定価格
 70mL:950円(税込)

〇販売店
 店名:竹島水族館(魚醤の購入には入場が必要です。)
 所在地:蒲郡市竹島町1−6
 電話:0533-68-2059
 営業時間:午前9時から午後5時まで
 入場料:大人(高校生以上):900円、子ども(4歳~中学生):500円、3歳未満無料
 定休日:なし
 URL:http://www.city.gamagori.lg.jp/site/takesui/

5 今後の展開について

   魚を捕る地元の漁師の方にもこの活動を理解していただいており、喜栄丸カベヤ水産加工では、漁獲量の多い魚の提案を受けてキンメダイ以外の魚醤を醸造中です。併せて、あいち中小企業応援ファンド(地場産業枠・農商工連携枠)の成果を活用し、地元の清酒を活用した魚醤調味料の開発も行っています。
 センターでは、引き続き愛知県内企業の製品開発について、支援を行ってまいります。

6 問合せ先

○魚醤の製造技術に関すること
 あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター
 保蔵包装技術室(担当:丹羽、石川)
 名古屋市西区新福寺町2-1-1
 電話:052-325-8094
 URL:https://www.aichi-inst.jp/shokuhin/

○製品「深海ギョの魚醤 キンメダイまるごと」に関すること
 喜栄丸カベヤ水産加工
 担当:主任 中西 美智子(なかにし みちこ)
    管理栄養士 中村 萩枝(なかむら はぎえ)
 蒲郡市形原町東上野58
 電話:0533-57-5932(中西)、0533-59-7948(中村)
 URL:https://kieimaru.com/

【用語説明】

※1 キンメダイ
 体長が大きいものでは50cmを越え、体高が高く赤い体色をしており、別種のタイと姿形が似ている。目の奥にタペータムという反射板があり、金色に光って見える。水深200~800m位に生息する深海魚であり、愛知県では主に渥美半島の沖合で漁獲される。煮つけ、塩焼き、みりん干しなどで食される。

※2  魚醤
 調味料の一種であり、原料として魚介類を使用することから魚醤と呼ばれる。世界の各地で製造されており、有名なものとして、ハタハタなどを使用した秋田の「しょっつる」やイカやイワシ・サバを使用した能登の「いしる」、海外ではタイで作られる「ナンプラー」やヨーロッパの「ガルム」などがある。

※3  あいち中小企業応援ファンド(地場産業枠・農商工連携枠)
 国、県、地域の金融機関の資金を基に(公財)あいち産業振興機構に基金を造成し、それを活用して地域産業資源を活用した中小企業の新事業展開を支援することにより、本県地域経済全体の底上げを図る。あいち産業科学技術総合センターや愛知県農業総合試験場等と連携して行う地域資源の農林水産物を活用した新事業展開への助成を行う。

※4  メヒカリ
 正式名称はアオメエソと呼び、目が青く大きく光って見えることから、地元ではメヒカリと呼ばれている。体長は15~20cmで、水深200~300mに生息する深海魚であり、底引き網漁で主に冬から春を中心に漁獲される。蒲郡市が県下のメヒカリ水揚げ量の95%を占めている。

※5  温醸
 醤油などの醸造において加温して醸造速度を上げることでより短期間で醸造できるようにすることを指す。化学反応は温度が高いほど早く進行するが、醤油などの醸造はタンパク質である酵素により進行するため、酵素が変性失活しない温度で行われる。

※6  全窒素
 物質中に含まれる窒素の割合を示し、食品では主にたんぱく質の含量を求めるために分析される。また醤油ではうま味の指標ともなっており、JAS規格による「標準」「上級」「特級」「特選」「超特選」の等級の規格値の1つとなっている。

このページに関する問合せ先

​あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター保蔵包装技術室
担当:丹羽、石川
電話:052-325-8094