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銅合金の新しい分析方法を開発しました~従来法の半分の時間で、より高精度に分析~

ページID:2023051902 掲載日:2023年5月19日更新 印刷ページ表示
8 働きがいも経済成長も9 産業と技術革新の基盤をつくろう

   あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市。以下「センター」という。)は、種々の分析機器を用いた分析や評価を行うことにより、企業の方々の新技術や新製品開発、モノづくりの現場で発生する様々な課題解決の支援をしています。
    この度、ビスマスを含む銅合金※1中の銅について、新しい分析方法を開発しました。本分析方法は、JIS(日本産業規格)に定められた従来の分析方法(以下「JIS法」という。)と比較して、半分以下の時間で分析可能です。また、JIS法と同等以上の分析精度を有しています。ビスマスを含む銅合金は多くの産業分野で用いられているため、更なる展開が見込まれます。
   なお、本開発の詳細を、2023年6月22日(木曜日)にセンターで開催する「第48回工業技術研究大会」において発表します(5月19日同日発表)。

1 開発の背景

   銅合金はさびにくく、加工がしやすいという特徴があるため、用途に応じた多くの種類が開発され、水道メーター、配管、電子部品など様々な用途に利用されています。
​   2003年10月の水質基準改正※2により、水道メーターに使用される銅合金の鉛フリー化が進み、鉛の代替としてビスマスを添加した銅合金が新たに製品化されました。この、ビスマスを添加した銅合金中の銅の分析方法については、2013年に「ビスマス分離銅電解重量法※3」としてJISが定められ、製品の安全性が図られています。
​   しかし、このJIS法は、前処理として白煙処理、ろ過、濃縮といった煩雑な処理が必要で、分析に長時間を要するという問題があります。そのため、JIS法と同等の分析精度で、より迅速な分析方法が求められていました。

2 開発内容

(1)研究開発の概要
(ア)分析法の検討
   銅合金中の銅については、試料を酸で溶解し、電極を浸漬させて銅だけを還元させてその重量を測定する電解重量法がJISで定められています。しかし、ビスマスを含む銅合金は、ビスマスも還元されて分析値に影響が出るため、前処理でビスマスを分離する必要がありました。そこで、センターでは前処理でビスマスを分離せず、還元されたビスマスの量をICP発光分析法※4により測定し、分析値から差し引くことで銅だけの値を求める方法を検討しました。
​(イ)分析精度の比較
​   銅合金鋳物分析用の標準物質を用いて、開発した分析法とJIS法の分析精度を比較しました。その結果、開発した分析法はJIS法よりもばらつきが少なく、精度よく分析できることが確認できました。
(ウ)開発した分析法の特長
   開発した分析法はJIS法と比較して、白煙処理、ろ過、濃縮といった煩雑な前処理が不要です。そのため、下図に示すとおり、従来は6日間かかっていた分析が、半分の3日間で可能となりました。

・従来のJIS分析法
    ​ビスマス(Bi)を前処理で分離し、銅のみ測定する。6日間必要。
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・開発した分析法
   ビスマス(Bi)を分離せず、銅の測定値からビスマスの測定値を差し引く。3日間で可能。
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(2)研究開発体制
   本研究は、公益財団法人内藤科学技術振興財団の助成「2022(令和4)年度(第34回)助成研究」を受けて実施しました。

3 今後の予定

   本開発内容の詳細を、2023年6月22日(木曜日)に開催する「第48回工業技術研究大会」において発表します(5月19日同日発表)。
○第48回工業技術研究大会
日時:2023年6月22日(木曜日)  午後1時から午後5時20分まで
場所:愛知県技術開発交流センター
(あいち産業科学技術総合センター産業技術センター内)
刈谷市恩田町一丁目157番地1  電話:0566-24-1841
主催:愛知県、愛知工研協会
後援:公益財団法人科学技術交流財団
URL:https://www.pref.aichi.jp/press-release/20230519-48th.html​

4 問合せ先

あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
化学材料室(担当:山口、吉元)
刈谷市恩田町一丁目157番地1
ダイヤルイン:0566-45-5642

【用語説明】
※1  銅合金
   銅を主成分とし、目的に応じた元素を添加した合金。銅に亜鉛を添加した黄銅や、銅に錫(すず)を添加した青銅が古くから利用されている。
※2  水質基準改正
   水道法で定める水質基準。重金属、化学物質、微生物など人の健康に影響がある51の項目について、基準値を定めている。鉛については、鉛の量に対して0.01mg/L以下と定められている。水道メーターには従来、鉛を5%程度含む銅合金が使用されていたが、水質基準の改正により、鉛を含む材料を使用することができなくなった。
※3  電解重量法
   試料を酸で溶解した後、溶液に電極を浸漬させて測定元素を金属に還元し、測定元素が電極に付着した重量により濃度を求める分析法。機器分析と比較して精度が高い。
※4  ICP発光分析法
    装置内部のプラズマによって原子化・励起された元素が、元の状態に戻る際の発光を観測し、液体試料に含まれる元素の種類と濃度を求める分析法。

このページに関する問合せ先

あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
化学材料室(担当:山口、吉元)
刈谷市恩田町一丁目157番地1
ダイヤルイン:0566-45-5642