
国内で生産するうどん・きしめんには製めんに適したオーストラリアの小麦銘柄「ASW」などが多く使われ、うどん・きしめん用の国産小麦の自給率は60%程度にとどまっていました。
このような中、地元で作られた小麦の粉“地粉”に注目が集まっており、全国各地で“地粉”を使用したうどんを作る動きが広がっています。
愛知県農業総合試験場は、これまでの小麦の欠点を克服し、収量性が高く、高品質な小麦を目指して2000年から品種改良に取り組んできました。
こうして生まれた、愛知県の栽培環境に適し、おいしいめんができる新品種、それが「きぬあかり」です。
「きしめん」「味噌煮込みうどん」など、独自のめん文化を持つ愛知県。愛知の食文化を愛知の食材で。「きぬあかり」は、そんな想いに応える、待望の新品種です。
しっかりしためん生地を作るためには、小麦粉に含まれるタンパク質の一つ、「グルテン」の質が重要です。「きぬあかり」は、質のよい生地を作る「グルテン」を生み出す「グルテニン遺伝子」を4種も有しています。 これにより、しっかりとしたコシのある食感のめんを作ることができます。
めんの食感を左右するでんぷんには「アミロース」と「アミロペクチン」の2種類がありますが、「アミロース」が適度に低いと、もちもちとした食感となります。「きぬあかり」は日本めんに適した「やや低アミロース品種」です。このため、その小麦粉からは、つるつるでもっちりした食感のめんを作ることができます。
めんの色をくすませる「灰分」が低く、明るく、優しいクリーム色の小麦粉ができるので、きれいな色のめんを作ることができます。
愛知県下学校給食用めん類は 現在、うどん・きしめん用としては、県産小麦に同量の北海道産小麦をブレンドして、たん白の調整・中華めん用としては、強力小麦粉に同量の県産小麦を使用して、県下一円に供給しております。
もし、きぬあかりを使用すれば、北海道産とのブレンドは必要なく、きぬあかりのみの小麦粉で“うどん”“きしめん”を製造することが可能と思われます。特に学校給食用は、一旦製造しためんを加温・加熱殺菌しなければなりませんので、その点からも使用の可能性は極めて大と考えられます。
愛知県製麺工業協同組合 副理事長 愛知県学校給食めん協会 会長 脇田 祐輔
のど越しがやわらかいけれど、しっかりと腰のあるめんが昔ながらの名古屋のめんの特徴です。
「きぬあかり」は小麦のやさしい色と、めんにした時にソフトな食感がありますので、名古屋のめんのやわらかさを出す要素として大変期待しています。
名古屋市製麺協同組合 副理事長 吉田 孝則
「きしめん」は、400年以上の歴史があり、愛知が誇る伝統食です。
「きぬあかり」は、そのつるつるとした食感を生み出すうえで最適です。
愛知で生まれ、育った「きぬあかり」を使用した「きしめん」が、愛知の名物として、より一層全国の皆様から愛していただければと期待しております。
愛知県きしめん普及委員会 委員長 加古 守
愛知のうどん、きしめんには、伝統の技法に基づく独自の手打ち技術があります。 日本麺に適した性質を持つ「きぬあかり」は、その製麺性に高い可能性を秘めており、その特徴を引き出すべく、日々研究を重ねています。
愛知で生まれた「きぬあかり」により、愛知のうどん、きしめんを更に盛り上げて行きたいと思います。
愛知県麺類食堂 生活衛生同業組合 平成25年度理事長 市原忠治
「きぬあかり」は、現在、愛知県で作付の多い「農林61号」に比べ、
1.穂が長く、収量が大変多い。
2.収穫時期が「農林61号」より早く、梅雨と重なりにくい。
3.草丈が短く、太いので倒れにくい。
4.湿害に強い。
5.コムギ縞萎縮(しまいしゅく)病に強い。
といった数々の強みがあり、愛知県での栽培に適した品種です。
収量性が高く、病気と湿害に強いこと、また、倒れにくく、梅雨が来るまでに収穫できるといった点において、生産者からも高く評価されています。
(「きぬあかり」の生産拡大とともに、愛知県の小麦10aあたり収量は向上し、2018、2019、2020年と3年連続で全国1位となりました。)
「きぬあかり」は、多収で病気や倒伏に強く栽培しやすく、その粉から作ったうどんは食感がツルツルとして強いコシが得られるよう開発された品種です。
生産者、実需者、消費者の皆さんに喜んでいただき、この地域の麦作に長く貢献できることを期待しています。
愛知県農業総合 試験場 作物研究部 作物研究室
愛知県では、「きぬあかり」を主力品種として位置づけています。作付面積は4,000haを超え、約2万tが県内の製粉会社を中心に利用されています。
「きぬあかり」は収量性が非常に高く、また湿害にも強いなど、愛知県での栽培に適した待望の小麦新品種です。
今後とも、製粉・製麺業界、消費者の方々の期待に応えられるよう、徹底した栽培管理を行い、高品質な小麦生産に取り組んでいきたいと思います。
我々の生産する「きぬあかり」が、愛知の麺文化を盛り上げていく「あいちブランド」となることを心より期待しております。
西三河農業協同組合 農作業受託部会 平成25年度部会長 鈴木正司
現在、「きぬあかり」は、海部地域、西三河地域、豊田地域を中心に栽培されています。徹底した排水対策や適期防除の実施により、実需者のニーズに応える高品質かつ安定的な生産に取り組んでいます。
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