愛知県衛生研究所

注意すべき蚊による感染症

2021年12月14日更新

The deadlist animal in the world」によると、蚊は最も人間の命を奪う動物です。これは、蚊自体に殺傷能力があるということではなく、蚊は様々な病原体を媒介し、感染症によって人間を死に至らしめることを示しています。

以下に代表的な媒介蚊と蚊媒介感染症をご紹介しますので、予防に役立ててください。

【媒介蚊について】

日本に生息する蚊およそ100種類のうち、吸血する蚊は20種類程度といわれています。代表的なものに、ヤブカ属のヒトスジシマカ、イエカ属のアカイエカ・チカイエカ・コガタアカイエカなどがいます。ヤブカ属のネッタイシマカは、かつて琉球列島や小笠原諸島などに生息していましたが、現在日本国内では絶滅しており定着していません。しかし、成田国際空港・東京国際空港・中部国際空港で幼虫や成虫が採集されていることから、今後定着するのではないかと懸念されています。(国立感染症研究所 日本におけるネッタイシマカの分布,侵入および定着

代表的な媒介蚊

【ヤブカ属】

*昼間吸血性。空き缶に溜まったような少量の水でも増殖可能。

ヒトスジシマカ
一般的に「ヤブカ」とよばれています
温暖化により生息域は北上しており、現在は北海道を除く全国に分布
デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱などを媒介
ネッタイシマカ
国内未定着ですが、国外から侵入定着するおそれがあります
デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱、黄熱などを媒介

【イエカ属】

*夜間吸血性。

コガタアカイエカ
日本全土に生息し、日本脳炎ウイルスを媒介
飛翔力があるため、発生源が遠い都会にも生息
日本における日本脳炎の媒介蚊は主にコガタアカイエカですが、アカイエカからも分離されているため、基本的には蚊に刺されないことが重要です

【ハマダラカ属】

*夜間吸血性。現在、日本国内でマラリアの流行はありませんが、マラリアを媒介する蚊は日本国内にも生息していますので、以下に紹介します。

シナハマダラカ
日本全国に分布
比較的軽症の三日熱マラリアを媒介
コガタハマダラカ
沖縄の宮古・八重山諸島に分布。現在沖縄本島には生息していませんが、温暖化が進めば四国・九州地域まで分布域を広げるおそれがあります。
重症の熱帯熱マラリアを媒介

近年では国際交流が活発になり、国内外で多くの大規模イベント(ワールドカップ、オリンピック、国際博覧会など)が開催され、渡航先でデング熱などの蚊媒介感染症に感染する機会が増えています。また、今後は地球温暖化の影響による蚊の生息地域の拡大と生息数の増加が懸念されます。

蚊の種類と媒介する感染症
蚊の種類 媒介する感染症
コガタアカイエカ・アカイエカ 日本脳炎
コガタアカイエカ・ヒトスジシマカなど43種以上 ウエストナイル熱
ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ デング熱・チクングニア熱・ジカ熱
ネッタイシマカ 黄熱
ハマダラカ マラリア
*ウエストナイル熱は、私達の身の回りにいるほとんどの蚊が媒介する可能性があります

代表的な蚊媒介感染症

1 日本脳炎

日本脳炎はアジアモンスーン地帯(南アジア~東南アジアを経て中国南部へ至る地域)に広く流行しています。世界保健機関(WHO)は世界で毎年少なくとも6万8千人が発症し、最大2万人が死亡すると推計しています(2021年8月現在)。日本脳炎は初めにブタの間でウイルス感染が拡がります。その後、ブタを吸血した蚊がヒトを刺すと、ヒトの間で流行します。多くは不顕性感染で、脳炎の発症率は感染者100~1,000人に1人とされています。日本でも昭和30年代には毎年500~1,600名の死亡者が報告されていました。現在、日本脳炎の発症は年間10人程度ですが、回復者の多くに重篤な後遺症が報告されています。東海地方では愛知県から2007年に40歳代女性1例(死亡例)、2008年に50代男性1例、三重県から2010年と2013年に各1例の発症報告があります(2013年の報告はこちら)。

厚生労働省ではブタの日本脳炎ウイルスの抗体獲得状況を調べています(調査には愛知県も参加しています)。この調査によると、ウイルスを持った蚊が国内で毎年発生しており、日本国内でも感染する可能性がありますので、引き続き注視していく必要があります。日本等のワクチン導入国では感染が抑えられていますが、海外では流行域が拡大しており、注意が必要です(国立感染症 海外における日本脳炎の流行状況とその対策)。

国立感染症研究所 日本脳炎ウイルス関連サイト

  • 病原体:日本脳炎ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
  • 潜伏期:5~15日
  • 症状:頭痛、発熱、悪心、嘔吐、めまい、重症例では意識障害、痙攣、昏睡など。致命率は高く、20~40%。
  • 注意事項:日本脳炎ワクチンを接種していない人は、接種を検討してください。平成7~18年度に生まれた人は接種していない可能性があります(予防接種後に重い病気になった事例をふまえ、平成17年度から21年度までは予防接種の案内がありません。現在は新たなワクチンが開発されたため、案内があります。詳細は厚生労働省 日本脳炎をご覧ください)
日本脳炎の感染リスクがある地域の地図
WHOホームページより抜粋(黄色が日本脳炎の感染リスクがある地域)

2 ウエストナイル熱 (ウエストナイル脳炎)

ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎)の原因ウイルスは、1937年ウガンダ共和国ウエストナイル郡で発見されました。その後アフリカ、南ヨーロッパ、中東に分布していましたが、1999年以降は北米にも発生がみられるようになりました。現在はアフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジア、オーストラリア、北米等へ拡大しています。アメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)によると、北米では2003年の大流行以降も患者報告数は増減を繰り返し、現在でも年間約2,000名の報告があります。ウイルスは鳥と蚊の間で感染環が維持され、蚊を介してヒトやウマなどに感染します。

ウイルスを保有した蚊に刺された場合、約80%は不顕性感染です。発症しても症状は軽く、約1週間で回復しますが、感染者の1%未満に脳炎や髄膜炎などの重い症状が出現することがあります。

ウエストナイル熱の感染経路
(厚生労働省結核感染症課ハンドブックより)

日本では2005年にアメリカ合衆国カリフォルニア滞在中に感染したと考えられる患者1名が、輸入感染例として報告されています。国内ではウイルスを保有する蚊は見つかっていませんが、ウイルス保有蚊の侵入を防ぐ目的で空港検疫所が蚊を捕獲して検査し、監視しています。しかし、日本に生息する多くの蚊がこのウイルスを媒介できることから、国内に侵入すると、流行を起こす可能性があります。万が一、流行国からの帰国者や観光客が国内でウエストナイル熱(脳炎)を発症しても、患者(感染者)を刺した蚊から別の人が感染する可能性はほぼありません(ウイルスがヒトの末梢血へ大量に出現することは少ないため、ほとんど起こらないと考えられています)。

国立感染症研究所 ウエストナイルウイルス関連サイト

  • 病原体:ウエストナイルウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
  • 潜伏期:3~15日
  • 症状:急激な発熱、頭痛、背部痛、めまい、発汗、発疹、リンパ節腫大など。高齢者では重篤化することが多く、頭痛、高熱、頸部硬直、感覚障害、昏睡、戦慄、麻痺などの症状が現れ、死亡率は3~15%とされています。*現時点ではこのような症状が出ても、流行地域からの帰国者以外はウエストナイル熱(脳炎)の可能性は極めて低いです。

3 デング熱

デング熱は東南アジアや中・南米、アフリカ、東地中海、西太平洋などの熱帯・亜熱帯地域で繰り返し流行していますが、ここ数年は世界的に発生数が激増しています。WHOは全世界で毎年4億人が感染し、50万人のデング出血熱が発生していると推計しています(2021年8月)。マラリアと異なり衛生状態の良い都市部でも流行し、日本人旅行者が感染する可能性が高いと考えられます。また、50~70%は不顕性感染で、不顕性感染者も感染源となることがあります。

日本では1942年から1945年にかけて長崎・佐世保・広島・呉・神戸・大阪で約20万人もの感染者が発生しました。その後、国内感染例はありませんでしたが、2013年にドイツ人観光者1名が発症、2014年8月下旬以降に関東を中心とした渡航歴のない国内感染例が100以上報告されました。蚊のウイルス保有状況調査の結果、東京都の公園でデングウイルス陽性の蚊が確認され、感染者の多くがこの公園やその周辺を訪れていたことから、ウイルス陽性蚊が感染源となった可能性があります。この国内感染例は最終的に19都府県から患者発生が報告されました。輸入感染例は世界的な感染者の増加を反映するように増加傾向で、2010年以降、毎年全国で約100~350例、愛知県でも毎年約10~20例の報告があります。

  • 病原体:デングウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)Ⅰ型からⅣ型までの4種
  • 潜伏期:2~15日(多くは3~7日程度)
  • 症状:発熱(38℃以上)、頭痛(しばしば眼球後部痛を伴う)、筋肉痛、関節痛、上肢内側に発疹が一時的に現れ、発症後3~4日後から限局した発疹(斑状紅斑)が体幹から末梢へと広がります。一部は出血傾向を主症状とするデング出血熱に(3~5%)、まれに頻脈、脈圧低下などの循環障害がみられ、ショック症状に陥ります。このような重症のデング出血熱は2度目以降の感染で発症することが多く、致命率は数%とされています。なお、重症化と血清型の関連については、以下を参照してください

4 チクングニア熱

チクングニア熱は1952~53年にタンザニアで初めて報告された感染症です。元々はアフリカ、東南アジア、南アジア、アフリカなど熱帯地域の風土病でした。2005~06年に観光地として著名な南西インド洋の島々で大流行し、ヨーロッパ諸国への帰国者たちから感染例が報告されました。2007年にイタリア、2010年にはフランス南部でも国内感染例が認められました。2013年末には新たにカリブ海地域での流行が報告され、北米・中米・南米を合わせた感染者は100万人以上と推計されています。デング熱やジカウイルス感染症と同じような症状を示し、感染経路(同じ媒介蚊)・流行地域も似ているため、鑑別が難しい疾患です。

チクングニアの感染リスクがある地域の地図
WHOホームページより抜粋(斜線で囲まれた部分がチクングニアの感染リスクがある地域)

日本では2006年に初めて輸入感染2例が確認されて以来、2018年までの輸入感染は年間10例前後でしたが、2019年には49例と報告数が急増しました。主な推定感染地は東南アジアですが、2014年と2015年は中南米での流行を反映し、同地域からの輸入感染数が増加しました。2019年の推定感染地は主に東南アジアで、この地域からの入国者の増加と同地域での流行を反映したと考えられます。

愛知県では2011年に2例、2013年に1例、2016年7~8月に3例、2019年7~8月に4例が報告されています。

国立感染症研究所 チクングニアウイルス関連サイト

  • 病原体:チクングニアウイルス(トガウイルス科アルファウイルス属)
  • 潜伏期:3~12日
  • 症状:発熱、関節痛、全身倦怠、頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹。発疹が多くに認められ、出血傾向(鼻出血・歯肉出血)、悪心・嘔吐をきたすこともあります。関節痛は急性期だけでなく、数か月~数年続くことがあります。

5 ジカウイルス感染症

ジカウイルスは1947年にウガンダ共和国ジカ森林でアカゲザルから発見され、1968年にナイジェリアで初めてヒトから分離されました。この感染症は2007年まで主にアフリカとアジアの一部地域で確認されていましたが、2007年にミクロネシア連邦のヤップ島で、2013年にはフランス領ポリネシアで流行し、2014年にはチリのイースター島で感染が確認されました。2015年には特にブラジルを含む中・南米で流行し、カリブ海地域を含めた国や地域から症例が報告されています。

ジカウイルス感染症にはジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症があります。

ジカウイルス病はジカウイルスの感染によって起こる後天的な感染症で、約80%は不顕性感染ですが、不顕性であっても感染源となることがあります。また、発症後、症状がなくなった後でもウイルスを保有している場合がありますので注意が必要です。日本では2016年に12例、2017年に5例、2019年に3例が報告されています。そのうち愛知県では、2016年3月にブラジルを含む中南米から2例、2019年に東南アジアから2例の輸入感染が報告されています。

先天性ジカウイルス感染症はジカウイルスが母体から胎児へ感染して起こる感染症です。その場合、小頭症などの先天性障害が起こる可能性があります。2015年にはブラジルで150万人もの感染者が発生し、2015年10月から2016年12月までに小頭症が疑われる胎児や新生児10,342例が報告されました。また、2016年にはタイで2例、ベトナムで1例の先天性ジカウイルス感染症による小頭症の発症例が報告されました。

国立感染症研究所 ジカウイルス感染症関連サイト

  • 病原体:ジカウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
  • 潜伏期:2~12日(多くは2~7日程度)
  • 症状:軽度の発熱(38.5℃未満)、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、結膜炎、疲労感、倦怠感などの軽い症状が2~7日続いて治り、予後は比較的良好です。
  • 注意事項:妊娠中の女性が感染すると胎児に感染する可能性がありますので、妊婦及び妊娠の可能性がある方は、流行地域への渡航を控えた方がよいでしょう。やむを得ず渡航する場合は主治医と相談し、蚊に刺されないよう厳密に対策してください。輸血や性行為など、血液や精液を介して感染する可能性がありますので、流行地域に滞在中または流行地域から帰国した場合は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか、一定期間控えてください。詳細は国立感染症研究所のジカウイルス感染症関連サイト内「ジカウイルス感染症のリスクアセスメント」を参照してください。

6 黄熱

黄熱はアフリカと中南米の熱帯地域で流行しており、中南米では雨季に多く発生しています。特にアマゾン川流域の熱帯雨林に接した国々では毎年のように患者が発生し、旅行者の感染例もあります。WHOは年間84,000~170,000人の患者が発生し、最大で死者が6万人に及ぶと試算しています(2021年8月現在)。

アフリカ:西アフリカでは2006年から大規模な黄熱撲滅キャンペーンが行われ、2015年には黄熱の集団発生は報告されなくなりました。一方で2010年以降、予防接種の行われていなかった中部、東アフリカで流行が起こるようになりました。2015年12月からアンゴラで、2016年1月からコンゴで黄熱が大流行しましたが、大規模なワクチン接種キャンペーン等の対策が行われ、流行は終息しています。しかし、アフリカでは2016年に上記以外の複数国から症例が報告されています。

中南米:2016年12月からブラジルで流行が起こりましたが、2017年9月に終息が宣言されています。2017年に入って、エクアドル、コロンビア、スリナム、ブラジル、ペルー、ボリビア、フランス領ギニアの7か国から黄熱の発生が報告されています。

日本では第二次世界大戦終戦以後、輸入感染例を含めて黄熱の発生報告はありません。中国ではアンゴラでの流行に関連して2016年3月に1例目の輸入感染例が報告され、その後、計11例が報告されました。

国立感染症研究所 黄熱関連サイト

  • 病原体:黄熱ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
  • 潜伏期:3~6日
  • 症状:発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、背部痛、悪心嘔吐など。多くは不顕性感染ですが、発症者の15%が重症化し、黄疸や出血傾向などを来たしてショックや多臓器不全に至る場合があります。重症化すると致命率は20~50%と高くなります。
  • 注意事項:予防には黄熱ワクチン接種が有効です。接種後10日目から生涯有効ですので、黄熱リスク国へ渡航する場合は予防接種が推奨されています。リスク国へ入国するとき、リスク国から次の国に入国するときに入国条件として黄熱予防接種証明書(イエローカード)の提示を要求される場合があります。イエローカードの提示が義務づけられていないリスク国に入国する場合でも予防接種が推奨されています。リスク国及び予防接種についてはFORTHホームページをご覧ください。

7 マラリア

マラリアはアフリカ、中南米、東南アジア等を中心とした亜熱帯や熱帯地域の主に辺地で現在も大流行しています。WHOは2019年の感染者は約2.3億人、死者は約41万人で、死者のほとんどがアフリカの子供と推計しています。日本では古くから「オコリ」の名前で知られ流行を繰り返していましたが、近年は年間50~80名の患者が報告されています。現在、国内感染例はなく、アフリカや東南アジアの流行地域で感染した人が帰国後に発症した輸入マラリアに限定されています。推定感染地域の流行を反映し、アフリカ地域の感染例では熱帯熱マラリアが、アジア地域の感染例では三日熱マラリアが多くなっています。2004年以降、サルマラリアによるヒト感染例の報告があり、日本でも2012年にマレーシアからの帰国者に感染例が認められました(報告はこちら)。

マラリアの治療にはクロロキンやスルファドキシン/ピリメタミン、アルテミシニン等の抗マラリア薬が使用されますが、最近では抗マラリア薬に耐性を獲得したマラリア原虫の拡散が問題になっています。

国立感染症研究所 マラリア関連サイト

  • 病原体:マラリア原虫(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアの4種に加えて、サルマラリアもヒトへ感染することが明らかになっています)
  • 潜伏期:国立感染症研究所及び米国CDC(米国では毎年1500人程のマラリア患者が報告されています)によると、マラリアに汚染されている蚊に刺された後、7日から30日前後に発症するとされています。三日熱マラリアの場合、典型的な症状が現れないまま一年以上経過することもありますので、多くのマラリアが流行地域から帰国した後、かなり時間が経ってから発症していることになります。三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫の場合、肝細胞内で休眠体が形成され、長期間経過後に再発することがあります。
  • 症状:悪寒、戦慄と共に高熱が4~5時間続き、頭痛、嘔吐、関節痛を伴います。熱発作は三日熱型や卵形では48時間、四日熱型では72時間、サルマラリア感染では24時間の間隔で起こりますが、熱帯型は明確な周期性がありません。特に、熱帯熱マラリアは重症化すると命に関わることがありますので注意が必要です。
  • 注意事項:東南アジアへ観光旅行をされる方は心配ありません。しかし、特に雨季にボランティア活動などで奥地に入る人は出来るだけ蚊に刺されないよう、活動時間の検討、長袖シャツ、長ズボンの着用、忌避剤(虫さされ予防剤)の使用に加え、蚊取り線香や蚊帳の使用等を考慮する必要があります。媒介蚊の活動が活発な夕暮れから夜明け直後は屋外での活動を最小限にし、かつ、DEET(ジエチルアミド)を含んだ忌避剤の使用が必要です。
     サハラ砂漠以南のアフリカ(南アフリカ共和国の大部分を除く)で野外活動をするなど感染の危険が高い人には、発症予防用の抗生物質がありますので、専門の医師等に御相談下さい。
     アフリカ、中南米、東南アジア等を中心とした亜熱帯や熱帯地域の辺地を旅行または滞在した人で、マラリア流行地域を離れた後(日本へ帰国後)、半年以内に原因不明の発熱があった場合、必ずこれらの地域への旅行・滞在歴を医師に告げて医療機関に受診することをお勧めします。

【蚊媒介感染症の予防と対策について】

蚊から身を守ろう!国内外を問わず、蚊に刺されない対策を!!

ウエストナイル熱、デング熱、チクングニア熱やジカウイルス感染症にはワクチンも予防薬もありませんので、自分たちで予防をしなければなりません。(注:デング熱については、一時海外で承認され使用されたワクチンはありましたが、ワクチン接種者から重症のデング患者が発生しやすいとわかったため、使用が中止されました。)

マラリア流行地へ渡航する際は、抗マラリア薬の予防内服を行うことが望ましいとされています。渡航先の流行状況や滞在期間、活動内容、基礎疾患の有無などにより予防薬が異なります。ご自分の体調や渡航先について事前に専門医と相談し、必ず専門医の指示に従って服用してください。予防薬を服用していても防蚊対策は必要です(FORTH マラリアについて)。

家屋の窓への網戸の設置、屋外にいる場合は長袖シャツや長ズボンの着用、露出部分の皮膚にDEET(ジエチルアミド)などの忌避剤を塗るなどの方法で防御しましょう。特に流行地へ旅行をするときは蚊に刺されないよう十分な準備と注意が必要です。

デング熱・チクングニア熱・ジカ熱・黄熱およびウエストナイル熱を媒介するヤブカ属は昼間吸血性のため、対象地域を旅行する際は昼間でも対策が必要です。また、ヒトスジシマカと違いネッタイシマカは都市部でも生育可能なため、注意が必要です。

マラリアを媒介するハマダラカ属と日本脳炎およびウエストナイル熱を媒介するイエカ属は夜間吸血性ですので、夜間外出時は特に注意してください。

マラリアの主な流行地域はアジアの山岳部・農村部、中南米の平野部と森林地帯です。アフリカでは大きく流行しており、都市部でも感染するおそれがあります。

厚生労働省検疫所のホームページでは海外での感染症の流行状況や予防接種等の情報提供を行っています。詳しくはFORTHホームページへ

蚊の発生を防ごう!

その地域に分布する媒介蚊を可能な限り減らすことが最も効果的です。蚊は少しの水たまりでも卵を産みますので、環境改善による蚊の幼虫発生源(空き缶、ペットボトルや古タイヤ、植木鉢の受け皿等の水溜まり)をなくすようにしましょう。

日本では新たな感染症の監視体制を強化するため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の一部改正を行い、デング熱に加え、ウエストナイル熱(脳炎を含む)(平成14年10月)、チクングニア熱(平成23年2月)、ジカウイルス感染症(平成28年2月)を四類感染症に指定しました。これら四類感染症を診断した医師は管轄の保健所に届け出なければなりません。

当衛生研究所では、全国の地方衛生研究所および国立感染症研究所と連携して上記の蚊媒介性ウイルスの遺伝子検査体制を整え、黄熱とマラリアを除く5種類のウイルス遺伝子を鑑別しています。