愛知県衛生研究所

病原体サーベイランスとは

2009年9月16日掲載

1999(平成11)年4月施行の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)」に基づいて国と都道府県等が実施する感染症発生動向調査事業は、従来法的根拠のなかった感染症サーベイランス体制を充実・強化したものです。患者発生状況サーベイランスと同様に病原体に関する情報の収集、分析および提供と公開も、感染症に関する情報の収集および公表、感染症の発生状況および動向の把握とともに、患者への良質かつ適切な医療の提供に不可欠であり、感染症対策上重要な意義があるとの認識がなされています(参考ページ参照)

愛知県では1976(昭和51)年より感染症(当時は伝染病)発生動向調査の一環として、主に小児の消化器系疾患、呼吸器系疾患、神経系疾患の病原ウイルス検索を実施しており、協力医療機関において採取された糞便、咽頭ぬぐい液、脳脊髄液からウイルス分離・検出を行っています。現在は、名古屋市を除く県内15の保健所管轄地域に1か所以上もうけられた総計31医療機関に検体採取をお願いしており、主な対象疾病は、感染性胃腸炎(乳児嘔吐下痢症を含む)、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、無菌性髄膜炎、インフルエンザ、麻疹、風疹です。

現在流行しているウイルスに関する情報の蓄積から、たとえば同じ感染性胃腸炎でも季節により主役がノロウイルスの場合とロタウイルスがあることがわかってきました。また、同じウイルスでも年や地域により異なるタイプ(遺伝子型、血清型:臨床症状では区別のつかないことも多い)が流行することもわかります。

これら公衆衛生上貴重な情報は、保健所をつうじて各医療機関に還元するとともに、国立感染症研究所に報告しています。また、愛知県衛生研究所ウェブページでは、病原体検出情報・検出速報を随時更新するとともに衛生研究所年報において年度毎の成績をまとめています。

ウイルスの検出・同定には、検体を様々な培養細胞に接種して微量のウイルスを増殖させたり(ウイルス分離)核酸を増幅の後、遺伝子型や血清型の決定が必要です。現時点で世界的に報告の少ないウイルスを検出した場合の同定や、陰性の判定には最初の接種後数か月を要することもあります。

参考ページ:
  感染症新法による感染症発生動向調査(サーベイランス)事業の概要
  病原微生物検出情報 Vol.20 No.4(No.230) 1999年4月号