愛知県衛生研究所

ワンプッシュ式殺虫剤の室内分布、濃度推移などを調査しました

2022年3月18日

近年、ワンプッシュ式のピレスロイド系殺虫剤が多く用いられています。これらは電気や火を使わずに、1回から数回の噴霧で長時間に渡り蚊を寄せ付けなかったり、駆除できると製品として販売されています。

ピレスロイド系殺虫剤は、哺乳類では殺虫成分が速やかに代謝・分解を受けるために安全性が高い薬剤ですが、大量に吸入したり浴びたりすることで嘔吐、悪心、呼吸困難、咳、眼の充血や痛みなどが起こると報告されています。日常生活において、どれくらいの量のピレスロイド系殺虫剤にさらされているかは明らかになっていません。そこで実態を明らかにする取り組みの一つとして、床面への薬剤の分布状況(調査1)、単回使用した場合の室内濃度の経時推移(調査2)、連日使用した場合の蓄積状況(調査3)を調査しました。

(この調査は2020年に名古屋大学大学院医学研究科 上山純准教授と共同で実施しました。)

※ピレスロイドとは
除虫菊の殺虫有効成分であるピレトリンや、その化学構造を改変して安定した作用が発揮されるように開発された化合物群の総称

調査1

ワンプッシュ式殺虫剤を室内で1回使用した際の、床面への薬剤の拡がり方を調査しました。調査範囲は縦3m、横2mとしました。

噴霧位置から前方3m、左右それぞれ1mの範囲に殺虫剤成分(トランスフルトリン)を検出しました。製品によって、床面にまんべんなく拡がるもの、ばらつきの大きいものがありました。

調査2

ワンプッシュ式殺虫剤を1回使用した際の、室内空気及び床面における薬剤の残留状況を調査しました。製品Bは調査1で床面の分布にばらつきが認められたため、床面濃度の調査から除外しました。

空気中濃度は時間の経過に伴い減少しましたが、床面には48時間後も残留していました。

調査3

ワンプッシュ式殺虫剤を連日使用した際(1日に1回の噴霧)の、室内空気及び床面における薬剤の蓄積状況を調査しました。空気中濃度では、使用前に5分間の窓開け換気を行った場合と行わなかった場合を比較しました。

連日使用によって空気中濃度、床面濃度ともに上昇しました。

使用前に5分間の換気を行うことで空気中濃度の上昇が抑制されました。

今回の調査で
  • ①薬剤は広い範囲に拡がるが、製品によって分布状況が異なること
  • ②噴霧された薬剤は空気中に漂った後に床に沈降し、長時間とどまること
  • ③連日使用により床面及び空気中濃度は上昇するが、空気中濃度の上昇は換気により抑制されること
がわかりました。

室内でワンプッシュ式殺虫剤を使用する際には、使用回数に注意し、適切に換気を行いましょう。