愛知県衛生研究所

桃の皮むきによる残留農薬の除去について

2010年7月16日掲載

桃の写真

白桃(または白鳳)は、甘い香り、やわらかな果肉、芳醇でなめらかな舌触りなど "好きな果物"の上位にランクインする果物の一つです。しかし、多くの方は、残留農薬に対する漠たる不安を少なからず感じているのではないでしょうか。その上、残念なことに当衛生研究所において2009年に行った行政検査で、白桃1件から、一律基準(0.01ppm)を超える除草剤が検出され、行政指導がなされました。そこで今回は、桃に残留している農薬が、皮むきによってどの程度除去できるのかについての調査結果を紹介します。

ppm(parts per million)とは、百万(million)に占める割合(parts)という意味で、1ppmとは百万分の1のことです。したがって、0.01ppmとは桃の果肉1トン(1,000kg=1,000,000g(百万g))に0.01gの農薬が含まれることを意味します。

平成10〜21年度の12年間に当所で調査した市販の桃(白桃、黄桃など水蜜種)21検体からは、シアノホス、ペルメトリン、スピノサド、ビテルタノール、クロロタロニルなど主に殺虫、殺菌目的で用いられたと考えられる38種類の農薬(延べ151農薬)が検出されました。しかし、その濃度は0.001〜0.2ppm程度で、法律で定められている基準値に対する割合は平均4%(中央値1%)と低いものでした。

基準値以下であれば、そのまま食べたとしても安全性に問題はありませんが、皮むきにより農薬の摂取量を減らすことができます。農薬を検出した桃14検体(25種類の農薬、延べ67農薬)を用いて、水洗い(スポンジによるこすり洗い)及び皮むきによる残留農薬の除去率を調べたところ、下図のような結果が得られました。

桃の水洗い、皮むきによる残留農薬の除去率のグラフ
※除去率は、様々な農薬の平均値であり、実際の除去率は農薬の種類により異なります

水洗い(こすり洗い)による農薬の除去率は平均11%程度でしたが、皮むきでは平均86%と高いものでした。農薬の多くは果皮に移行して残留すると考えられ、水洗いではその一部しか除去できませんが、(水溶性で果肉への浸透移行性の高いアセフェートなどを除いて)皮むきにより大部分の農薬を除去することができます。

今回紹介した桃を含む生鮮野菜・果実についての調査結果の一部は、衛研技術情報(市販農作物に残留する農薬の調理による減少について, VOL28 (2), 6-9, 2004)[PDFファイル]、及び「食品衛生研究」54巻6号(2004)に掲載されています。